研究課題/領域番号 |
16H03741
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
坂本 真士 日本大学, 文理学部, 教授 (20316912)
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研究分担者 |
加藤 隆弘 九州大学, 大学病院, 講師 (70546465)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 抑うつ / ストレス / 社会系心理学 / 精神医学 / 心理的障害 / 新型うつ / バイオマーカー / 学際研究 |
研究実績の概要 |
代表者(心理学研究)、分担者(精神医学研究)の2班に分かれて研究を行っている。 心理学研究では、第1に、企業の現場において「新型うつ」と思われる人に対し、どのように対処したかを調べた。具体的には、14名の会社員(おもにキャリア支援を行う立場の社員)に集まっていただき、集団形式でインタビューを行った。インタビューの結果、うまく対処した事例、対処しきれなかった事例などが収集された。修正版グランティッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いて質的分析を行い、興味深い知見が得られた。第2に、「新型うつ」の事例を提示し、周囲の人がどのような印象を抱き、どの程度援助したいのかを質問紙によって調べた。日米の学生、さらに管理職-非管理職社員を対象とした調査を行った。第3に、昨年度に引き続いて「新型うつ」および従来型抑うつに関する雑誌や新聞の記事を調べ、どのような内容が報じられているのかを調べた。このように、本年度は「新型うつ」とされる人を周囲がどのように感じ、どのように扱ってきたのかについて、多様な方法によって調べた。なお、年度末には、本年度に実施した研究成果の一部を一般受けに提供するためのシンポジウムを開催した(2018年3月17日開催、「新型うつ」研究の最前線-研究と実践の対話のために-、於:日本大学文理学部) 精神医学研究としては、精神医療機関を受診した抑うつ症状を呈する患者の中で「新型うつ」に関する診断基準を満たす患者のリクルートを開始し、数名の該当者に対して、心理尺度に加えてバイオマーカーの計測も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は概ね順調に進展していると判断した。 2年目は、周囲の人が「新型うつ」とされる人をどう扱うのかを明らかにすることが主な目的であるが、社会のレベルとして新聞や雑誌記事を扱い、従来型抑うつとの比較を検討している。対人的なレベルとして、実際に「新型うつ」とされている人を扱った職場の人の意見を集めるだけでなく、「新型うつ」を巡る一般的な人の意見を広く集めており、データを解析することにより、「新型うつ」のどのような特徴が特に問題なのか、周囲の人の援助意図を下げる要因になり得るのかといった問題に取り組むことができる。なお、1年目の研究成果に関して8件の学会発表を行っており、この点からも計画が概ね順調に進展していると判断できる。患者群のリクルートも順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、2年間で得られた調査結果が豊富にあるので、そのデータを分析することにエネルギーを割きたい。「新型うつ」とされる社員に対処した社員を対象として行ったグループインタビューのデータは、質的な調査として同様の事例を扱うために貴重な示唆を与える。また、事例を用いた研究は、日米の学生でデータをとっており、「新型うつ」とされている事例が、日本において特に問題視されるのか、文化の違うアメリカでも同程度に問題視されるのかを知ることができる。「新型うつ」を巡る周囲の捉え方についての理解が進めば、受け手側に啓発することによって、不適応を予防する可能性が検討できる。「新型うつ」と診断される臨床患者のエントリー・データ取得を引き続き、継続する。
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