研究課題
本研究では、手の運動発現に内在する眼球運動と関連した視覚処理の機序解明を目標とし、特に、今年度は、自己の手に対して生じる身体意識が眼球運動にどのような影響を与えるかを調べた。ある目標に向かって手を動かすとき、眼球も手の動きに協調して動く。このように眼と手が協調して動くときには、眼球運動システムが手に関する脳内身体表象にアクセスしている可能性が考えられるが、眼球運動システムがどのような身体表象にアクセスしているかはよくわかっていなかった。脳内の身体表象には、少なくとも二つの身体表象があることが知られており、一つは身体イメージと呼ばれ、もう一つは身体スキーマと呼ばれている。本研究では、コンピューターグラフィックスにより作成された手(CGハンド)を提示し、CGハンドに対して自分の身体があると感じる場所(身体定位)を制御できる実験環境を構築した。身体定位を実験的に操作することで、被験者の物理的な右手の位置と主観的に感じている右手の位置を分離することが可能となる。このように、物理的な右手の位置と主観的な右手の位置を分離した状態で、被験者が感じている右手に向かって眼球運動を行うと、どちらの位置にサッカード眼球運動が向けられるかを調べた。その結果、主観的な右手の位置に向くことが示された。この結果は、自己の手に対して生じる身体意識の中でも、身体イメージと呼ばれる視覚に関連する身体表象に、サッカード眼球運動がアクセスしていることを示している。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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