研究課題
本年度は、人間の知覚情報処理における、事前情報の効果を、主に時間的側面に着目して検討した。まず、注意を向けて能動的に書類する視覚情報とそれ以外の干渉する視覚情報の相互作用の特性を検証した。実験では、干渉情報を無視するように教示しながら対象となる視覚情報に関する課題を行い、干渉情報の空間的位置が、課題に及ぼす干渉効果量に影響することを見出した。この研究により、複数の刺激間の相互作用をベイズ理論の枠組みを用いて説明した。さらに、左右脳半球をつなぐ脳梁が欠損している分離脳患者で同様の実験を行い、干渉する情報処理に大脳の皮質下の接続が大きな役割を果たしていることを見出した。また、被験者にある一定時間の課題を行わせる際に、実際よりも長いもしくは短い時間を伝えることで、時間に関する期待と予測を操作し、人間が時間を知覚する際に、期待と予測が事前分布として知覚に貢献することを見出した。期待と予測が時間の知覚に及ぼす効果をモデル化し、論文として発表した。さらに短い時間特性を検証するため、0.1秒単位の注意の揺れが、視覚刺激の検出に影響を及ぼすことを見出した。また、画像統計量が知覚の時間解像度に及ぼす効果を検証し、先行研究で知覚に影響を及ぼすと発表された要素が、画像統計量で説明できる旨を報告した。本年度の研究は、いずれも、環境の情報や直前の経験が、視覚情報や時間情報の知覚や認知に影響を及ぼすことを示したものである。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、視覚情報処理を中心に研究を進めた。5報の論文が国際誌に採択され、さらに3報が査読中であり、研究は順調に進展しているといえる。高インパクトの論文誌への採択がなかったため、平成30年度はよりインパクトの高い研究につながるように、計画を立てている。
最終年度は、視覚と聴覚、時間知覚と色覚など、モダリティ間の相互作用の検証を進める。また、聴覚刺激を用いてそれまでの経験が聴覚の知覚や認識に及ぼす効果を検証する。最終年度に向けて、よりインパクトの高い雑誌への投稿を目指す。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 11件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (2件)
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