研究課題/領域番号 |
16H03750
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
川口 潤 名古屋大学, 情報学研究科, 特任教授 (70152931)
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研究分担者 |
齋木 潤 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (60283470)
齊藤 智 京都大学, 教育学研究科, 教授 (70253242)
梅田 聡 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (90317272)
上野 泰治 高千穂大学, 人間科学部, 准教授 (20748967)
小林 正法 関西学院大学, 文学研究科, 博士研究員 (60723773)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 認知コントロール / 記憶抑制 / エピソード記憶 / 計算機モデル / メタ記憶 |
研究実績の概要 |
記憶抑制メカニズムに関して,前年度実施した系列記憶における検索誘導性忘却実験について学会発表をおこなった。この実験では6個の項目を系列学習し,最初の3つあるいは最後の3つを 想起した後,最後にすべての事例を想起するという課題を行うと,想起していない3項目の記憶成績が低下 するというものであり,系列記憶においても検索誘導性忘却の現象を見いだしたというものである。並列分散処理を基礎とした計算機モデルによる予測とも一致した結果が得られ,記憶抑制というメカニズムの 存在を支持する結果となっており,論文化を進めている。 情動覚醒が記憶の関係について計算機モデル研究を行った。情動覚醒は記憶の促進や抑制といった相反する効果を導くことが知られているが、どちらの効果が出てくるかは不明であった。本研究では、処理される情報の顕著性(saliency)によって、促進効果と抑制効果の予測が可能になることを示した。また、そんような条件分岐が現れる心的現象を説明する際に、認知コントロール的なメカニズムが仮定しなくても説明が可能であることを、計算機モデルを用いて実証した。 記憶検索の内容に関する確信度の推定が,再認成績とは異なった基準にもとづいていることを信号検出理論を用いた再認実験によって見いだし,論文化した。この実験では風景画像を学習刺激とし,再認課題を2肢強制選択課題として実施した。その後,その再認判断に関する確信度を答えることを参加者に求めた。その結果,再認課題は2つの反応選択肢の類似度(記憶強度を実験的に操作)の影響を受けたが,確信度は再認判断と確信度は異なった情報を元になされていることが明らかとなった。記憶検索に関する確信度はいわゆるモニタリング,メタ記憶機能と考えることができるが,その特徴を捉えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
記憶抑制研究において,これまで検討されてこなかった順序記憶に関しても検索誘導性忘却が見られることを見いだしたデータについて,実験の事前登録をおこなったことを含めて発表をおこなった。計算機モデルによる予測とも一致するものであった。意図的記憶抑制と眼球運動の関連については実験機器の不調等があり,進行がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
記憶抑制研究においては,順序記憶に関して発表をおこなったが,眼球運動を用いた実験を再度プログラムを精査して進めていくとともに,記憶抑制に関する研究の現況をまとめることを目指す。
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