研究課題/領域番号 |
16H03753
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研究機関 | 東京国際大学 |
研究代表者 |
布川 清彦 東京国際大学, 人間社会学部, 准教授 (90376658)
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研究分担者 |
井野 秀一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 総括研究主幹 (70250511)
土井 幸輝 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所, その他部局等, 主任研究員 (10409667)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 白杖 / 硬さ / 重さ / 視覚障害 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,次の3つである.1) 白杖ユーザの多くが報告する「白杖が手の延長のように感じる」という経験を対象として,これまでの実験結果とユーザの報告から「身体化(主観)=f(目的,道具デザイン,動作,身体負荷,パフォーマンス)」というモデルを提案し,このモデルの妥当性を実験的に検証する.さらに,2) 白杖と同じ身体外の道具である車いす,そして白杖とは違い失われた身体部位を補うことを目的とする義手・義足への適用可能性についてのモデルの適応可能性について実験的に検討する.そして,3) この自分の身体ではない道具が自分の身体になるという現象のモデル化を通して,自分の身体とは何かについて改めて問い,自分の身体を知覚すること(身体知覚)の意味や働きについて考察する.これらの目的に沿って立てられた研究計画は,大きく次の3つに別れる.研究1:白杖の身体化モデルの実験的検証,研究2:道具身体化モデルの適用可能性検討(車いす,義手・義足),研究3:道具の身体化データベース構築. 研究1において,平成28年度はモデルの要因である目的とパフォーマンスの関係を明らかにするために,白杖による環境情報の探索(対象の硬さ・重さ)について視覚障害者と晴眼大学生を実験参加者として実験を実施した.物理的な硬さを統制するためにゴムを材料に選定した.これにより,20度から90度まで10度ごと条件の硬さを用意することができた.また,硬さや大きさの感覚を測定する心理学的な方法としてマグニチュード推定法を選定した.これにより,他の心理学的方法よりも,短い時間で実験を実施することができるようになり,参加者の負担を大きく軽減することができた.これらの成果を国際学会等で発表した(5件).研究2および3については,関連する研究者から情報収集を行い,次年度以降の研究につながる基礎的知見を収集した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究1:白杖の身体化モデルの実験的検証」において,白杖の身体化を支えていると考えられる身体負荷(筋電)と白杖の情報(振動・速度)の測定方式と機器の選定のための予備実験の過程で,人と白杖の測定範囲が予想外に広いという新たな知見が得られ,予定していた計測機器では1)筋電と白杖情報の正確な測定と,2)人と白杖の同期測定が困難であることが判明した.そのため,実験機器の選定等を含む追加の予備実験を十分に行った上で,本実験をやり直す必要が生じ,機器の購入を次年度に延期し,実験実施を翌年に延期することになった.これにより,測定パラメータの再検討を行い,より精度の高い測定が実施できる見込みとなった.そして,白杖による環境情報の探索(対象の硬さ・重さ)におけるパフォーマンス測定(心理実験)については,視覚障害者と晴眼大学生を実験参加者として実験を実施し,本年度に計画していた条件を実施した.さらに,その結果から条件を再検討した実験を進めることができた.研究2「道具身体化モデルの適用可能性検討(車いす,義手・義足)」と研究3「道具の身体化データベース構築」については,身体化に関する質的データ収集の準備を進める事ができた.
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今後の研究の推進方策 |
A) 「研究1:白杖の身体化モデルの実験的検証」のスケジュール変更 研究1において使用する身体負荷(筋電)と白杖の情報(振動・速度)の測定方式と機器の選定を延期したことに伴い,実験実施を翌年に延期することになった.この実験は,本年度と次年度に継続して実施する予定であった.そのため,1)本年度の実験条件を次年度に実施予定の実験条件と合わせて実施する,2)実施計画を少しずつ後へずらすなどして,最終年度の取りまとめに間に合うようにする. B) 「研究2:道具身体化モデルの適用可能性検討(車いす,義手・義足)」のスケジュール変更と内容の修正 平成29年度の研究2における実験は,研究1で使用した実験方法と測定機器を使用するように計画されている.研究1のモデルパラメータ動作と身体負荷に関する実験実施時期が遅くなることに伴い,研究2の実験開始時期を研究1の実験成果がある程度まとまった後,つまり実験方法の妥当性が明確なった時点にずらすことになる.実験が開始できるようになるまでは,関連する研究者およびユーザへのヒアリングを重点的に行い,その成果を質的研究としてまとめられるようにする. C) 「研究3:道具の身体化データベース構築」の内容修正 研究3では,様々な道具について調査を行う予定であったが,研究1の計画修正に伴い,広範な道具についてのデータベースではなく,研究2と合わせて道具の身体化に関する質的研究としてまとめていくように計画を変更する.
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