研究課題/領域番号 |
16H03771
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
末冨 芳 日本大学, 文理学部, 教授 (40363296)
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研究分担者 |
湯田 拓史 宮崎大学, 大学院教育学研究科, 准教授 (20448161)
内山 絵美子 小田原短期大学, その他部局等, 助教 (40740478)
田中 真秀 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 助教 (50781530)
大野 裕己 滋賀大学, 教職大学院, 教授 (60335403)
本図 愛実 宮城教育大学, 大学院教育学研究科高度教職実践専攻, 教授 (70293850)
川上 泰彦 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (70436450)
佐藤 博志 筑波大学, 人間系, 准教授 (80323228)
貞廣 斎子 千葉大学, 教育学部, 教授 (80361400)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 学校間連携 / 地域教育経営 / イギリス / アカデミー |
研究実績の概要 |
平成29年度は国内調査を継続し、イギリス調査を実施した。 国内調査については、仙台市、小林市における学校間連携組織について調査を実施した。仙台市では、学区の複雑性から、小中学校連携は学校長の判断となっている。1小学校から複数の中学校に進学するP小学校では、中学校との連携は生徒指導上の引継ぎの確実な遂行および小学校での体験的活動の充実等による生徒指導上の課題の予防など、学校間連携を最小限にとどめる判断が行われていた。いっぽうで複数小学校から1中学校に進学してくるQ中学校の場合には、中学校長が学区内の全小学校と中学校との目的連携を戦略化していた。具体的には小学校および中学校の健康・学力・体力データを解析し、中学校段階での数学指導および健康面での生活指導に改善の余地があることを見出していた。この分析からQ中学校区では、中学校の教職員が小学校での算数指導や生活指導に学ぶという部門間連携が採用されている。Q中学校の例は、エビデンスベースドの目的連携の好事例として、注目される。また小林市では、地域の支援団体が学校間の教育条件の格差等を比較分析し、学校間格差を縮減すべく体験活動の人材配置や学校のプログラム開発支援を行っている。こちらは地域主導型の目的連携として、やはり注目される。 イギリスでは、Multi Academy Trustという複数学校で設立される学校運営法人が増加しているが、評価手法や学校にとってのメリット分析などが課題とされている状況を確認できた。日本との比較分析のための事例収集やインタビュー調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通り、国内調査、海外調査ともに順調に進展している。単位学校を超えた資源配分および人材活用の在り方は日本では小中学校連携として、無目的に進展させられている自治体も少なくないが、エビデンスにもとづく目的連携の重要性を実証、理論の両面で明らかにできてきた。 とくにイギリス調査からは、ともすれば連携組織の中で中学校に対し小学校が軽視されがちであることや、単位学校の権限が削減され、学校におけるスクールリーダーの効力感が損なわれるリスクも明らかになった。日本の状況との比較分析としてきわめて重要な状況と分析の視点を獲得することができた。 また昨年度調査実施したオーストラリア・クイーンズランド州の小学校長会が訪日し、あらためてオーストラリアにおける学校間連携の現状と課題について意見交換を実施した。クイーンズランド州では小規模校や僻地も多いことから、Collaborative Empowermentという学校間のカリキュラム開発や研究交流が自主的に行われている。この中で、次世代の多様な地域のリーダーを育成するため40代未満の若い校長や女性校長の積極的な登用と育成が行われ、学校間の交流はリーダー養成という意味でも活発化していることもあきらかになった。 当初の予定以上に、単位学校を超えた学校運営に関する状況把握および国際比較の視点が充実してきたところである。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、国内調査のフォローアップ実施を行い、理論および実証分析を完成させる予定である。 具体的には、単位学校を超えたクロススクール型の学校運営に関して、批判的な視点からも検討を行い、日本と英豪との比較分析を実施する予定である。リーダーシップの所在や、単位学校の校長や教職員同士のネットワークや文化的葛藤にも注目しつつ、分析を深化させていく。 分析の経過報告を6月の日本教育経営学会にて行い、その後研究成果を公刊する予定である。
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