本研究は、人文社会系のマクロ動向を下敷きにしつつ、国立大学を事例に、人文社会系学部の組織改組、カリキュラム改革を事例考察することで、人文社会系学問の在り方を探ることを目的としている。人文社会系のマクロ的動向や海外の動向は初年度、事例大学の訪問調査は2年目に行い、3年目は事例大学の学生調査の実施、最終年度は事例大学の教員調査の実施を行う計画で研究を進めてきた。 本年度は最終年度にあたる。当初は前年度に終える予定であった調査事例の学生調査のうち、先方との調整が入り遅れていた1事例について学生調査を実施し、年度末に結果のフィードバックを行った。2年目の調査で、各事例が同じ政策の影響を受けつつも、学内の異なる事情を反映して、名称こそ類似した学部改組を実施しながらも、教員の学問構成やカリキュラムの作り込みには明らかな相違があることが確認されたが、学生に実際の学びを尋ねた結果からも、他の研究で実施した全国調査と同様の傾向が確認される一方、各事例のカリキュラム特性に応じて異なる学生調査の結果が得られた。現在、学生をめぐる調査は、全国調査と個別大学調査が並行して行われている状況だが、政策形成に資する調査と、当該大学の改革に寄与する調査とは同一とは限らない。今回、個別大学の改組・改革の検証に準じたものと、全国調査との比較の双方を組み込む調査設計を行ったが、今後こうした調査そのものの在り方が問われてくることが予想される。 また学生調査の結果と相補的に考察するため、学生調査と同様の設問項目を入れ込み、また別途行っている全国大学教員調査との比較検証も行える形での、調査事例に対する教員調査も学生調査の実施終了後に行った。こちらは、学生調査の終了がずれ込んだため、まだ十分な考察が行えていないが、学生調査の結果と総合しつつ、引き続き分析を進めていく。
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