研究課題/領域番号 |
16H03788
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
紅林 伸幸 常葉大学, 教育学部, 教授 (40262068)
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研究分担者 |
中村 瑛仁 大阪大学, 人間科学研究科, 講師 (30756028)
川村 光 関西国際大学, 教育学部, 教授 (50452230)
冨江 英俊 関西学院大学, 教育学部, 教授 (70366805)
越智 康詞 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (80242105)
鈴木 和正 常葉大学, 教育学部, 准教授 (80759077)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 特別の教科 道徳 / 市民を育てる教育 / ドイツの市民性教育 / チェコの市民性教育 / 海外の学校等視察調査報告 |
研究実績の概要 |
本研究では、教職大学院施策の中で重要度が増しているアクション・リサーチ型の研究を通じて、実践学や政策論の枠組みを乗り越える実践的教育研究を展開している。2019年度~2020年度(繰り越し含む)は、研究Ⅰ:小・中学校の道徳の授業作り等の参画し、現場が新しい道徳によって実現しようとしているものを明らかにする作業と、研究Ⅱ:ポーランドの道徳の実践の視察調査を計画したが、コロナ禍で限定的な実施となった。 研究Ⅰでは、「自分と友達の善さに気づく道徳の授業をつくる:善さが溢れる教室をめざして」(2019年度)、「道徳の授業における学習評価と授業評価のための授業研究」(2020年度)で報告する2つの授業づくりプロジェクトを実施し、その作業過程を通じて現場の意識やニーズの確認を行った。現場では、一元的ではない、一人一人の価値観を大切にする授業の構築が求められていることが明らかになってきている。研究Ⅱでは、これまでの視察データを下にした報告の執筆を行い、「多元的多文化主義に立脚した市民を育てる教育の可能性―ドイツの学校組織マネジメント:学校視察調査の結果から―」(2019年度)「チェコとスロバキアにおける市民性教育―学校カリキュラムの自律性を巡る語りの違いから見えてくるもの―」(2019年度)「市民を育成する道徳教育に関する研究-スイス・ドイツ・チェコの事例から-」(2020年度)で、欧州の道徳教育が、市民を育てるという明確な目的のもとで、体験や社会との繋がりを重視した実践を行っていることや、自律性とコミュニケーションという個と社会の繋がりが意識された実践になっていることなどの特徴を明らかにした。また、「海外の学校等視察調査データの分析法に関する検討-ナラティヴ・アプローチの応用可能性-」(2019年度)では、短期の海外視察によるデータを有効に活用する分析法について検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は2020年度までの計画であり、2019年度(繰り越しにより2020年度まで)は、道徳の授業づくりのアクションリサーチと海外視察調査を実施する予定であったが、新型コロナウィルスの感染拡大が解消されなかったため、予定していたポーランドの学校視察調査は中止となり、また県を跨ぐ移動が制限されたこともあり、国内の小・中学校の視察調査も限定的な実施となった。いずれもギリギリまで、可能性を探ったが、状況が好転せず、研究の変更を余儀なくされた。 海外視察調査は新規の調査ができなかったため、これまでに実施してきた調査データの整理と再分析を行った。この作業によって、視察した国々の道徳教育の特徴を明確にすることができた。 一方、国内の実践の参加観察も、限られた地域での実施となったため、むしろ特定の現場に密着する形でアクション・リサーチ形式の研究の可能性を探ることにした。 こうした対応により、2019年度の研究計画については、概ね予定していた観察はできた。ただし、極めて限られた地域の観察に制限されてしまったため、本研究が予定していた全国規模の研究という点では十分とは言えない。2020年度の研究も繰り越しとなり2021年度実施となっているが、全国規模の質問紙調査の実施によって、全国的な傾向を把握したい。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの感染が沈静化しなければ、当初の計画通りの実施は不可能であり、既に2020年度に繰り越した2019年度計画にある海外視察調査は実施不可能となった。そのため、これまでに実施した海外視察データを再分析することによってグローバルな観点からの市民を育てる道徳教育の課題を明確化する計画に変更を余儀なくされている。なお、海外視察による研究は2021年度採択の研究課題において、内容を一部変更して実施する予定である。 また、全国規模の学校現場の視察調査も実施が難しい状況にあるが、これも2020年度に実施したアクション・リサーチ型の研究に変えることで一定の成果が期待できることが明らかになったため、最終年度はそれを継続して実施する。 最終年度(2021年度)は全国規模の道徳の実施状況に関する質問紙調査を実施する計画である。教科化以前との比較が目的であるため。平常時のデータであることが必要であり、2020年度に実施することはできなかった。しかし、2021年度はほとんどの学校が通常通りに実施されており、実施が可能な状況にあると理解している。コロナの状況を見て、対象地区の選定などを考えることになるが、基本的に当初計画通り全国規模で実施する予定である。
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