本研究は、生徒の安全に対する意識を俯瞰的に把握し、生徒の視点に立った安全教育プログラムを教育現場に提供することを目的としている。令和元年度は、主に①工業高校機械系学科における工作機械使用時の生徒の情意と安全意識の関連性の把握、②中学生を対象とした材料加工を伴う学習活動場面における安全意識の構造の検討、③中学生を対象とした安全意識を高める教育実践を行った。 ①では、工業高校機械系学科で工作機械等を扱う際の情意を、生徒のアンケート結果でカテゴリ化し、「安全配慮」、「楽しさ・面白さ」、「緊張感」、「恐怖心・不安感」等と分類した。次に、生徒の安全意識能力と各カテゴリの回答頻度の相関を検討したところ、「安全配慮」、「楽しさ・面白さ」に関する記述のあった生徒ほど安全能力意識が高く、逆に「恐怖感・不安感」について記述した生徒ほど安全能力意識が無形成なことが明らかとなった。②では、道具や工作機械を用いた材料加工を伴う学習場面における中学生の安全意識の構造について、先行研究をもとに下位概念を再構成し、確認的因子分析を用いてその構造を検討した。その結果、中学生が工作機械等を扱う場面における安全意識は、「危険予知」、「安全維持」、「事故対応」の3項目を規定とした構造であることが明らかとなった。③では特に、ボール盤での作業における姿勢と視線に着目してそれを可視化し、学習者にフィードバックする授業実践、「歩きスマホ」の危険性を認識させる授業実践を行った。また、ロボット教材を取り上げながら安全性という観点からの認識を高められるような授業実践を行い、生徒の視点に立った安全教育プログラムの裾野を広げるようにした。 また、交通安全意識尺度を活用した交通安全意識の研究について、ドライビングシミュレーターによる安全意識向上の研究、以前の研究が対象としていなかった70歳以上の高齢者を対象とした研究について協議した。
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