研究課題
これまで「気になる子」として挙げられてきたものの,支援の対象としてはあまり注目されてこなかった「不器用(ぎこちなさ)」のある子どもに焦点をあて,幼小連携の観点から小学校入門期である幼児における協調運動の困難さをチェックできる質問紙の開発を行ってきた。前年度に開発した質問紙について,さらにその妥当性を検証するために,対象児を増やして再検証を実施した。その結果,前年度と同様に年長児においてM-ABC2(英語版)実技検査との有意な相関が確認できた。開発した質問紙は因子分析から大きく微細運動と粗大運動の二因子に分かれることも明らかとなった。さらに,協調運動の困難さが前書字段階にある子どもにおいて描線技能にいかなる影響があるのか明らかにするために,対象児に対してPWT描線テスト(尾崎,2018)と漢字書字課題を実施し,その際にAnoto Digital Penを用いて運筆プロセスの定量的評価も実施した。その結果,質問紙調査やM-ABC2実技検査で評価の低かった1名の幼児において,PWT描線テストも標準領域外に判定された。PWTテストと漢字書字との関連について,描線課題実施時に筆圧の低い子どもは漢字のなぞりや視写時においても筆圧が低いことが明らかとなった。さらに,漢字書字時における視線探索過程を健常成人を対象として試行的に実施した。昨年度までの研究成果に関しては,学会等で発表するとともに,その成果の一部は論文や書籍等に公表することができた。研究成果をさらに発展させ,学内では研究拠点として申請し,認定を受けている。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通りに研究は進んでおり,チェックリストの開発は順調に進んでいる。成果の一部は学会や論文,書籍等で公表することができた。
連携研究者であった1名を研究分担者とし,さらに連携を深めながら研究を推進していく。対象児の少なさから,当初小学校まで追跡調査を行うことを計画していたが,DCDを含む発達障害の疑いのある子どもを対象としてチェックリストの妥当性を確かめることの方が取り組むべき内容と考え,保護者や保育者を対象とした調査を実施し,チェックリストの妥当性を検証していく。さらに,協調運動の困難さと運筆技能との関連,神経教育学的アプローチにより書字指導法の検証についても引き続き研究を進めていく。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うちオープンアクセス 4件、 査読あり 3件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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