本研究では三次元アトムプローブ顕微鏡(3DAP)装置を改良し、固体触媒を反応条件下で測定することにより固体触媒の活性サイトを原子レベルで構造解析が可能な新たな分析装置である活性サイト原子分解能イメージング顕微鏡(Active Site Atomic Resolution Microscopy; ASARM)を開発し、触媒活性サイトの構造分析方法を確立することが目標である。ASARMは触媒機能を持つ試料表面に反応ガスを噴射し触媒反応が起きた場所を電界イオン顕微鏡(FIM)で観察することにより触媒反応サイトを特定する。その後、反応ガスの導入を止め3DAP測定を行うことで反応サイトの構造を観察する二段階で測定を行う。 (1)表面触媒反応活性点の分布解析:FIMにより表面原子配列を明らかにした(111)面を先端に持つ白金の針先で、残留水素と雰囲気酸素の反応による水分子の生成を観測した。H2O関連イオンは針先の広い部分から放出されており、白金においては触媒活性点は広く分布していることが示された。しかし、最も強くイオンを放出する部分は先端中央の(111)面ではなく、その周囲3か所に存在する{240}面付近で、この部分が特に活性が大きいことが示された。{240}面はほかの面と比較して原子レベルでの凹凸がもっともはげしい部分であることから、白金表面での酸素による水素の酸化反応は、原子レベルでの凹凸の激しさに関係していることが示唆された。 (2)電界強度とイオン放出強度の関係の解析:白金先端から放出される残留水素を起源とするイオンの放出強度分布を測定した結果、電界強度を徐々に強くしていくと、初めに(H2)+イオンが放出され始め、追ってH+イオンが放出されるようになうことが明らかとなった。
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