研究課題/領域番号 |
16H03815
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
金子 隆司 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90272856)
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研究分担者 |
青木 俊樹 新潟大学, 自然科学系, 教授 (80212372)
寺口 昌宏 新潟大学, 自然科学系, 助教 (30334650)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | π共役高分子 / 光学活性らせん構造 / ポリラジカル / アントラセン / ポリ(アリーレンエチニレン) / ポリ(フェニルアセチレン) / 磁気光学効果 / 分子磁性 |
研究実績の概要 |
1.モノマー配列を制御したポリ(9,10-アントリレンエチニレン)の合成 安定なガルビノキシル残基と主鎖へのスピン非局在化が期待できるフェノキシル残基の両方を有するポリ(アントリレンエチニレン)を合成した。側鎖置換基の位置規則性に関わらず、ガルビノキシルラジカルのみを有するポリ(アントリレンエチニレン)と比較して、すべての共重合体においてESR線幅の狭幅化が観測された。これは、フェノキシルラジカルスピンが主鎖のアントラセン骨格に非局在化することでガルビノキシルとの交換相互作用が大きくなったためと考えられる。また、末端にテトラフェニルメタン構造を導入した2,7-フェノキシ置換ポリ(9,10-アントリレンエチニレン)を合成することで、溶液中でも反平行に配列して凝集した構造を示唆する吸収および発光スペクトル挙動を示した。 2.光学活性らせんポリ(フェニルアセチレン)誘導体の電子状態 3,5-位に水素結合可能なヒドロキシメチル基および4-位にビフェニル構造を有する光学活性らせんポリ(フェニルアセチレン)誘導体が、デュアル発光機能を有し、その強度が極性溶媒刺激により制御された。すなわち、らせん構造が維持される非極性溶媒中では、主鎖付近のフェニル基間のエキシマー発光が優勢なのに対し、極性溶媒によりらせんπスタック構造が崩壊することで、側鎖ターフェニル基からの発光が優先されることを明らかにした。 3位にヒドロガルビノキシルを有するフェニルアセチレンモノマーが、光学活性な1-フェニルエチルアミン存在下でらせん選択重合が進行することを明らかにした。CDスペクトルの溶媒および温度に対する依存性は低く、溶媒や温度に対してそのスペクトルが大きく変化する4位置換体に比べて安定ならせん構造を有しており、対応するラジカルを生成させてもCDスペクトルが観測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、アリーレンエチニレンを骨格とした基本的なマクロモノマーおよびシークエンス制御ポリマーなど確立した合成法により、より深化した分子設計の化合物を合成できた。それらの高次構造と電子状態の相関に対する知見も集積されつつある。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の成果を元に試料を量合成し、溶媒、添加剤、温度など外部刺激によりらせん構造を制御する条件をさらに探索すると共にらせん状のラジカル配置と電子状態・磁気的相互作用の相関を明らかにする。分子内架橋の条件等も最適化することにより精密ならせん構造を固定し、光学分割したキラルポリラジカルも合成し、光学純度との関連を議論する。
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