研究課題/領域番号 |
16H03820
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
北島 正弘 国立研究開発法人物質・材料研究機構, ナノ光制御グループ, NIMS特別研究員 (00343830)
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研究分担者 |
長尾 忠昭 国立研究開発法人物質・材料研究機構, ナノ光制御グループ, プリンシパルインベスティゲータ (40267456)
島田 透 弘前大学, 教育学部, 講師 (40450283)
片山 郁文 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (80432532)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ナノ構造物性 / 局在光・熱物性 / 熱伝導 / フォノン |
研究実績の概要 |
本年度はナノ構造作成と極薄膜の音響フォノン閉じ込めに関する研究を行った。 1)ナノ粒子配列体の作成と局在物性評価:円柱状・矩形状金属(Al, Au,Mo)ナノ構造の2次元配列体をコロイドマスクエッチンッグ法および電子リソグラフにより作成した。また、Biの極薄膜をMBE(Molecular Beam Epitaxy)法により作成した。これら材料の局在光・熱物性は、光吸収・輻射スペクトル、赤外振動分光および顕微ラマンなどにより評価した。 2)超高速時間分解測定-結晶性Bi極薄膜のコヒーレント音響フォノンの閉じ込め: 実験はポンプープローブ測定により行い、用いたレーザーパルスは時間幅7.5fs、中心波長800nm、繰り返し周波数80MHzのTi:Sapphire モードロックレーザーであった。膜厚が40nmの場合、測定された時間分解反射率にはBi-Bi伸縮振動に対応する周波数3THzの光学フォノンモードのみ観測された。膜がさらに薄くなるとゆっくりとした振動が、光学フォノン振幅に、重ねて現れた。この低周波モードの周波数は膜が厚くなるとともに減少する:膜厚7nmでは~0.2THz;20nmでは~0.34THzであった。このように、コヒーレント音響フォノンが極薄膜に閉じ込められることが超高速時間分解測定により確証された。 薄膜を伝搬する音波の速度はv=2fdで表される。 fに観測された音響フォノンの周波数を、dにBiの膜厚を入れると、v=4700m/sと計算される。この値はバルクBiのやく2倍となる。これは、観測された音響フォノンが倍波であること、あるいは音速が薄膜化に起因する電子状態(結合状態)の変動に影響されること等を示唆する。長い遅延時間測定が必要とされる。 さらに室温から10Kまでの異なる温度で音響フォノンの観測を行った。光学フォノンとは異なり、音響フォノンの周波数は温度よらずほぼ一定であった。これは膜内での音響フォノン閉じ込めを特徴づけるものである。今後はナノ粒子系での測定に拡張する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金・アルミウムなど2次元金属ナノ構造、Biおよびその合金の極薄膜の作成とそれらの局在光物性の測定・解析の研究は順調に進んだ。また、ポンープローブ実験については、既存の遅延時間15psスキャンディレイを50psまで拡張し、これを用いて時間分解反射率に関する実験を行った。特に、極膜Biについて膜厚依存性(膜厚7nm-40nm)と温度依存性についての系統的測定結果から、コヒーレント音響フォノンの閉じ込めの確証および音速の評価を行うことができた(詳細は実績概要で記述)。 しかし、この50psスキャンディレイ系をAlの2次元ナノ構造配列(径~μm)に適用したが、現在まに音響フォノンの信号は検出されていない。これは50psでは遅延時間が不足(まだ短い)していることに主たる問題があると考えている。遅延時間をさらに100ps~nsに拡張する等、測定系の改良が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
コヒーレント音響フォノンのダイナミクス研究を効率化するために、以下のような研究計画を推進する: 1)ナノ粒子配列体の作成と局在物性評価の方法 局在プラズモン増強およびプラズモンカップリングの効果を引き出すとともに、多様な音響フォノンモードを誘起することを目的に、粒子形状や粒子間隔をより精密に加工する(サイズ数10nm~10nm程度;主として電子線リソグラフを使用)。 2)超高速時間分解測定 ナノ粒子における音響フォノンの周期は光学フォノンと比べて長く、形状や部位にもよるが径100nmオーダーの粒子では数10ps-1nsと予想される。現使用のシステムは遅延時間は不十分なので、20cm-30cm の遅延光路を有する光学系を立ち上げる。また、孤立粒子系の時間分解実験を行うため顕微測定システムの開発に着手する。
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