研究課題/領域番号 |
16H03821
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研究機関 | 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所 |
研究代表者 |
後藤 秀樹 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子光物性研究部, 主席研究員 (10393795)
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研究分担者 |
俵 毅彦 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子光物性研究部, 主任研究員 (40393798)
国橋 要司 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子光物性研究部, 研究員 (40728193)
眞田 治樹 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子光物性研究部, 特別研究員 (50417094)
章 国強 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子光物性研究部, 主任研究員 (90402247)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | もつれ光子 / 酸化エルビウム / 半導体ナノワイヤ / 量子ドット |
研究実績の概要 |
本研究は、量子情報処理の基本的な要素である、通信波長帯でのオンデマンドなもつれ光子源の実現を目的とし、固体ナノ構造の発光特性に着目し、その波長を始めとするスペクトル特性の高度な制御技術を確立させる。この成果を用い、高効率なもつれ光子発生装置を構築し、量子通信の大規模化、光量子コンピューティングなど量子情報の発展と実用化に貢献する。 固体ナノ構造の作製、光非線形による波長変換、フォノン物性などの分野で学術的に貢献するとともに、量子情報にとどまらず、光・電子工学への応用を通して、近年・未来の技術的課題と社会的要請に応えることも目指す。 以上の目的を達成するため、もつれ光子発生のため2種類の固体ナノ構造を研究対象とし、3つの研究項目に取り組んだ。具体的には、量子ドットから発生する単一光子を用いたもつれ光子対の発生、酸化エルビウム(Er2O3)結晶を用いたもつれ光子対の発生、高制御性ナノワイヤ量子ドット形成であり、目的達成のための要素技術を確立を目指した。 全ての項目に関して研究が進展した。まず、量子ドットの物性解明に関連する、ナノ構造のスピン物性および制御に関して成果が得られた。また、酸化エルビウムに関しては、もつれ光子発生に向けての重要な物理量の制御手段を明らかにした。ナノワイヤについても新規ナノ構造の作製技術を実現させた。これらの成果を、国内会議で発表し、特許出願も実現させた。酸化エルビウムに関しては、2編の論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
もつれ光子発生のため、2種類の固体ナノ構造を研究対象とし、量子ドットから発生する単一光子を用いたもつれ光子対の発生、酸化エルビウム(Er2O3)結晶を用いたもつれ光子対の発生、高制御性ナノワイヤ量子ドット形成の3つの研究項目に取り組んた。 1つめに関しては、量子ドットの物性解明に重要となる、半導体ナノ構造でのスピン物性に関して進展させ、国内外での会議発表、特許出願を実現させた。また、波長変換のための光学系の整備を行った。 2つめは、酸化エルビウムの光学特性の物性解明が進み、論文発表を行った。また、もつれ光子発生にとって重要である物理量を制御する手段についても新たな知見が得られ、こちらも論文で発表した。 3つめでは、自己触媒型というオリジナリティの高いナノワイヤ技術が進展し、他の手法では作製が困難なナノ構造を実現させた。この成果は、国内外の会議で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
以下の3つの研究項目を推進する。 『研究項目1:量子ドットから発生する単一光子を用いたもつれ光子対の発生』前年に引き続き、量子ドットから発生する光子を光非線形効果によって波長変換を行い、通信波長帯のもつれ光子対を発生される。量子ドットから発生する単一光子を、継続的に高度化させてきた顕微分光技術を用いて、高効率波も長変換が可能なPPLN(Periodically-poled LN)結晶に導入し、ポンプ光を用いる光非線形によって、通信波長帯の単一光子に変換する。今期は、非線形結晶材料の検討を行い、変換効率の向上を図る。 『研究項目2:酸化エルビウム(Er2O3)結晶を用いたもつれ光子対の発生』発光波長の均一性にすぐれたEr2O3結晶を用い、発光過程の時間分布をフォトニック結晶を用いて均一化して通信波長帯のもつれ光子対を発生させる。今期は、Er2O3は、Si基板を用いて、実績のあるEr2O3専用のMBE装置によって作製する。フォトニック結晶の作製や、光学評価は既存の装置で実施する。また、前年度に準備した新しいMBE装置を用いた試料作製も行う。 『研究項目3:高制御性ナノワイヤ量子ドット形成』量子ドットの発光波長の分布を低減するため、ナノワイヤ技術を用いて、高制御性の量子ドットを実現する。ナノワイヤの配列の制御性を高めるため、選択成長マスクのサイズ、ナノワイヤの構造を変化させて、ナノワイヤ量子ドットの発光波長の分布を評価する。
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