研究課題/領域番号 |
16H03822
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
新倉 謙一 日本工業大学, 工学部, 教授 (40360896)
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研究分担者 |
三友 秀之 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (50564952)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ナノワクチン / インフルエンザウイルス |
研究実績の概要 |
金ナノ粒子上で、抗原タンパク質(ヘマグルチニンタンパク質HA)の固定化方向を制御するための化学手法を探った。ウイルス様の順方向固定化のためにHis-Tagを使った。今回、水溶性のオリゴエチレングリコールを介して、His-Tag固定化するためのリガンド分子を新たに化学合成した。一方、ウイルスとは逆方向の固定化のためにHA結合性能のペプチドを利用した。HA結合性ペプチド末端にアルキンを導入し、アジド基を粒子表面に提示してクリック反応にて固定化する手法を試した。しかしこの反応では銅イオンを使うため反応時に粒子が凝集してしまう問題が生じた。そこで銅イオンを使わずにクリック反応するため、環状のアルキン誘導体をペプチドに導入した。これにより水分散性の改良を試みている。 また、ワクチンでは、抗原だけでなくアジュバント分子(免疫賦活剤)の選択も活性の鍵となる。我々は、経鼻インフルエンザワクチンにおいてアジュバント分子(低分子量合成RNA)をナノロッドと複合体化することで活性を上げることができることを見いだしてきた。しかし皮下接種における粒子形状・サイズの効果は不明だった。今回抗原HA投与量は、皮下接種を基準として100ngと高い量として皮下と経鼻を比較した。皮下接種ではサイズ・形状に関係なく、アジュバント分子単独よりも複合体のワクチン活性が上がった。一方、経鼻接種では抗原の投与量が高いため、アジュバント分子単独でも効果が見られ、複合体化することの効果が隠れてしまった。しかし、比較的大きな40nm球形粒子を使うとむしろ活性が低い傾向が見られた。球形粒子をHAで被覆すると経鼻ワクチンとして効果的である前年度の結果と対照的である。このアジュバント分子と抗原によって選択すべき粒子が異なるという知見は今後、メカニズム解明などに重要な知見となりえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ナノ粒子の分散性を保つための試行錯誤に時間を使ってしまった。抗原タンパク質固定化の方向性の効果についてのワクチン活性はまだ明らかにできていない。
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今後の研究の推進方策 |
作製した金ナノ粒子のサンプルの化学的特性を十分に明らかにした上で、予定通り生物実験(ワクチンアッセイ)に進めていく。
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