研究課題
これまで,2硼化マグネシウム(MgB2)からMg2+をキレート錯体として取り除くと,化学的に活性な硼素の2次元シートが形成することを見出しました(特願2015-067282).本研究ではこのような2硼化金属から形成する化学的に活性な硼素の2次元シートに着目しました.本研究の第1の目的は硼素シートの化学反応性の起源と反応メカニズムを解析し明らかにすることです.第2の目的は,この高い化学反応性を緻密に制御し,硼素を基盤とした様々な新規の2次元化合物材料の創成することです.今年度はまず硼素シートの化学反応性の起源を明らかにするため,水とMgB2との化学反応過程を連携研究者の中村潤児教授,藤田武志准教授,岡田晋教授,西堀英治教授とともに詳細に調べました.この結果,MgB2と水との反応は2段階で起きていることがpH計測,生成ガス定量分析,生成物の電子顕微鏡解析,X線光電子分光,X線回折,反射赤外吸収分光などによる解析から新たに明らかとなりました.具体的にはMgB2 + 2H2O → 2BH + Mg2+ + 2OH-で示されるMgと水素とのイオン交換反応に続き2BH + 2H2O → 2B(OH) + 2H2↑で示される加水分解反応が起きていることがわかりました.さらに,この反応で形成するナノシートは超音波をかけないで静置して合成した場合は0.7nmの層間距離を持つMgとOH基を有するスタック構造を持つナノシートとなることが新たにわかりました.また,これらの化学反応性の起源・メカニズム解析と並行して第2の目的遂行のため,Mgイオンと水素イオンを完全にイオン交換した水素化硼素シートも新たに合成しました.このシートはエタノールの脱水反応に触媒特性を示すことが新たにわかってきました.
2: おおむね順調に進展している
水とMgB2との反応によりナノシートが形成するメカニズムを解明し硼素の高い反応性の起源が,MgB2中から得られる硼素がカチオン的であることに由来することを明らかにできたこと,また,エタノール脱水触媒機能があるシートを見出すことができたことより,おおむね当初の計画通り順調に進展していると判断しました.
MgやOH基を有する硼素シートや水素化硼素シートが得られたため,これらの機能性を触媒活性を中心に調べます.また,今年度得られた知見を立証するため他のイオンとの反応を実現することで別の新しい硼素を基盤とした2次元シートの合成とその機能性の解析を行います.
すべて 2017 2016
すべて 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)