研究課題
赤外領域の光電変換に有利な,PbS量子ドット(QD)とZnOナノワイヤ(NW)の混合層上に,同種のPbS QD層(上部QD層)を介してAu電極を形成した太陽電池(NW型)に着目し,近赤外領域における光電変換特性を検討してきた.H30年度は,PbSQDとZnO,混合層と上部QD層の接合界面などのエネルギー状態を理解することに注力した.そこで,「ヘテロ接合界面の表面電位変化の直接観測」と「量子ドットのエネルギー準位依存性」について検討した.主な研究成果を以下に示す.NWの代わりにZnO緻密層を使い,その上にQD層を積層した太陽電池(平坦型)では,光励起した電子が,Au電極側に逆拡散するため,太陽電池特性が著しく低下する.そのため,電子ブロッキング層の挿入が不可欠である.ところが,NW型では,その挿入は必須ではない.この要因を解明するため,NW型太陽電池の断面方向の表面電位を,表面プローブ顕微鏡で評価した.1000nm程度の厚さの積層構造に対して,表面電位を測定するために,数nm程度の平坦性を有する断面作製などサンプル調製の工夫を行った.表面電位は,透明導電性膜(FTO)/混合層/上部QD層の積層構造に対し,FTOのみを短絡させて(開放電圧状態),測定した.光照射時と暗状態で表面電位は,FTO電極から対極側に向かい正方向に増加した.特に興味深い点は,光照射時に混合層と上部QD層の界面でステップ状の電位変化が起こることである.NW型では,混合層のPbSQD部分で光励起した電子が速やかに,ZnOの伝導帯下端に移動するため,上部QD層が電子ブロッキング層の役割を果たしたため,混合層と上部QD層界面で電荷蓄積が生じたものと考えられる.以上より,NW型太陽電池の特徴であるPbSQDとZnONWのハイブリッド構造をうまく制御できたことが,赤外領域での高効率発電を可能にした主要因と考えられる.
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Solar Energy Materials and Solar Cells
巻: 195 ページ: 220~227
10.1016/j.solmat.2019.03.011