研究課題
無機ナノ粒子の合金化は、基金属の性質を制御するだけではなく、機能の複合化や単一金属だけでは発現することのない新規特性を与える手法として注目されている。平成28年度までに、貴金属の合金化の新奇手法として、単分散なパラジウム-リン(Pd-P)合金ナノ粒子を出発物質としたPd基合金ナノ粒子の合成手法を開発した。本手法では、様々なPd基合金ナノ粒子の合成に成功しており、出発粒子となるPd-Pナノ粒子の粒径や形状の単分散性が反応前後において保持される仮晶反応であることが確認されている。平成29年度は、出発物質となるPd-Pナノ粒子を様々な形態に制御することで、Pd基合金ナノ粒子の高度な形態制御を試みた。まず、平均稜長が16 nmおよび36 nmの立方体Pdナノ粒子と、リン源であるトリオクチルホスフィンとの反応により、カーケンドール効果を利用した17 nmおよび37 nmの中空Pd-Pナノ粒子を合成した。得られた各粒径の中空Pd-Pナノ粒子をIn前駆体と反応させることで、中空構造を保持したPd-In合金ナノ粒子を合成した。得られた中空Pd-Inナノ粒子のXRD測定を行ったところ、B2(塩化セシウム)型の結晶構造を有することが判明した。また、反応前後において中空構造が維持されていることから、本反応が高次の形態制御手法としても有用であることを明らかにした。中空Pd-In合金ナノ粒子のUV-Vis吸収スペクトルを測定したところ、B2-PdInの局在表面プラズモン共鳴(LSPR)に起因する吸収ピークが可視領域に確認された。吸収ピークの極大波長はB2-PdInナノ粒子の粒径の増大とともに長波長側にシフトし、金属ナノ粒子のLSPRに特徴的な傾向が観測された。
2: おおむね順調に進展している
研究計画に従い、第5周期遷移金属(Pd)がpブロック元素(P)と共有結合した金属化合物の合成に成功し、その電子構造変調を達成するとともに、P選択的ガルバニック置換反応により、従来の液相合成では得られない合金相をもつ未踏合 金ナノ粒子の合成に成功した。また、イオン化ポテンシャルの大きく異なる二種金属元素の合金化により合金ナノ粒子の電子構造が変化する 描像、ならびに、電子構造変調に基づく基礎金属物性(プラズモン特性)を、理論 (分子研信定准教授・飯田助教との共同研究)・実験両面から明らかにした。
今後は、これまでに得られた種々の金属化合物ナノ粒子ならびに合金ナノ粒子の新規な物理的・化学的性質を明らかにし、電子構造との相関について検討し、「基底電子構造変調」という新しい概念に根ざした『新ナノ金属相科学』という新しい物質科学を提案する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
Chem. Sci.
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http://www.scl.kyoto-u.ac.jp/~teranisi/