研究実績の概要 |
H30年度は、昨年度に構築し性能評価を行った、光励起-脱励起に基づく時間分解顕微蛍光検出システムを用いて、単一微粒子の励起状態ダイナミクス計測に挑戦した。サンプルの励起状態生成にはフェムト秒Tiサファイアレーザー(波長740 - 880 nm(試料に合わせて波長選択), パルス幅70 fs, 繰り返し80 MHz)の第二高調波を用いた。誘導放出誘起のための基本波パルスは、同時二光子吸収の寄与を抑制するためにグレーティングペアを用いてパルス幅を10 - 12 ps 程度に伸長した。 単一微粒子の超高速発光ダイナミクス測定の試料として、有機色素を内包した有機溶媒液滴の水分散コロイドを準備した。水中の微小液滴はブラウン運動を呈するため、単一微小液滴の測定には、水中で微小液滴を特定の位置にとどめる必要がある。その目的のために、光トラッピング法を用いた。波長380 nmの励起用光パルスと、励起光パルスに対して光学遅延を与えた誘導放出用光パルス(760 nm)を同軸に倒立型光学顕微鏡に導入し、対物レンズで試料溶液に集光した。このとき、誘導放出用近赤外ピコ秒パルスを微小液滴の光トラップ光としても使用した。 近赤外ピコ秒パルス光により単一微小液滴を水中で光トラップし、液滴中の有機色素をフェムト秒SHG光により励起した、励起光と光捕捉・誘導放出用近赤外光パルスの光学的遅延を種々変化させ、液滴からの蛍光発光を高感度CCDカメラを用いてイメージとして検出した。このとき、光学フィルターにより励起光及び光捕捉・誘導放出光をカットし、試料からの蛍光のみを検出した。一連の測定で得られた光学遅延に対する蛍光強度の時間変化に対して、解析モデルを用いて解析することで、蛍光の減衰曲線と寿命を求めた。検出用エレクトロニクスの装置応答関関数に依存しない顕微蛍光寿命測定法を単一微小液滴系に適用することに成功した。
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