研究課題/領域番号 |
16H03831
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
中村 真紀 国立研究開発法人産業技術総合研究所, ナノ材料研究部門, 主任研究員 (00568925)
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研究分担者 |
小菅 寿徳 筑波大学, 医学医療系, 研究員 (00376774)
大矢根 綾子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, ナノ材料研究部門, 主任研究員 (50356672)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | リン酸カルシウム / 複合ナノ粒子 / MRI造影剤 / 動脈病変 / 早期診断・治療 |
研究実績の概要 |
本年度は、医薬品共沈法を用いて、磁性酸化鉄ナノ粒子とリン酸カルシウムの複合ナノ粒子の作製に取り組んだ。医薬品共沈法は、認可済み医療用注射液のみから、穏やかな条件でリン酸カルシウムナノ粒子を生成させる手法であり、安全性の面から臨床応用に有利な手法といえる。6種の医薬品注射液を原料として調製したリン酸カルシウム過飽和溶液に、MRI造影剤であり磁性酸化鉄ナノ粒子を主成分とするフェルカルボトラン注射液を添加し、穏やかな条件(37℃)で短時間(30分)静置した結果、磁性酸化鉄ナノ粒子を含むリン酸カルシウム粒子を得ることができた。しかし、本粒子のゼータ電位は0 mVに近く、長く分散状態を保てなかった(分散後30分以内の沈降を観察)。そこで、フェルカルボトラン注射液を含むリン酸カルシウム過飽和溶液に、カルシウム、リン、鉄の濃度を保ったまま、ヘパリンナトリウム(ヘパリン)注射液あるいはアデノシン三リン酸二ナトリウム(ATP)注射液を添加し、同じ条件で粒子を作製した。得られた粒子は、比較的大きな負の値のゼータ電位を有し(ヘパリン含有粒子:-15 mV、ATP含有粒子:-13 mV)、分散性の向上も確認された。粒子に取り込まれたヘパリンのスルホ基、カルボキシル基、ATPのリン酸基が、中性付近で負電荷を有するためと考えられる。また、DLSによる平均粒子径は、ヘパリン含有粒子で約300 nm、ATP含有粒子で約400 nmとなり、病変部に集積する細胞(マクロファージ)への取り込みに適したサイズとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目は主に、MRI造影剤(磁性酸化鉄ナノ粒子)をリン酸カルシウムに内包させた複合ナノ粒子の作製ならびに構造解析を行い、マクロファージへの取り込みに適したサイズの粒子を得ることができた。また、雑誌論文や学会において成果の発表も行っており、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
まず、1年目に作製した磁性酸化鉄ナノ粒子とリン酸カルシウムの複合ナノ粒子について、細胞への取り込み実験を行い、粒子を取り込んだ細胞をMRI撮像して細胞内における粒子の造影強度を評価する。さらに、疾患モデルマウスに粒子を静脈投与し、組織切片観察などにより病変部における粒子の集積を評価する。得られた知見をフィードバックし、作製条件を最適化する。 これと並行して、造影剤と治療薬をリン酸カルシウムに共内包した粒子を作製する。具体的には、原料品の混合割合、温度などを変化させ、複合ナノ粒子を得る。生成粒子の形態・組成を調べ、マクロファージへの取り込みに適したサイズの複合ナノ粒子の得られる作製条件を追求する。得られた複合球状ナノ粒子のうち、目的のサイズを満たす粒子について、細胞や病態モデルマウスによる評価を行う。細胞への取り込み効率、細胞や病態モデルマウスにおける造影強度、病態モデルマウスの病変部縮小などの評価項目が、粒子の形態・組成などによりどのように変化するかを解析し、得られた知見を作製条件検討にフィードバックして、複合ナノ粒子のさらなる最適化を図る。
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