研究課題/領域番号 |
16H03832
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
白土 優 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (70379121)
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研究分担者 |
野村 光 大阪大学, 工学研究科, 助教 (20506258)
中谷 亮一 大阪大学, 工学研究科, 教授 (60314374)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | スピントロニクス / ナノ磁性 / 交換磁気異方性 / 電気磁気効果 / Cr2O3 |
研究実績の概要 |
電気磁気効果を示す反強磁性Cr2O3を用いた電界誘起界面反強磁性ドメイン反転に関して、平成28年度は、パルス電圧によるダイナミクス計測の第一段階となる以下の項目について検討した。 (1) 高交換バイアスと低保磁力の共存可能な積層構造の決定 (2) DC電界によるドメイン反転条件の磁場依存性 (3) 走査型XMCD顕微鏡と磁気光学Kerr顕微鏡によるドメイン観察手法の構築 (1)に関しては、従来のCr2O3/Co/Pt積層膜をベースとして、Cr2O3/Co界面に数原子層のAuを挿入することで達成可能であることを見出した。(論文掲載済み。知財出願あり)本効果は、これまで検討されてきたPt界面層では実現できず、軟X線磁気円二色性測定を用いた界面Crスピンの検出手法を基に、その微視的なメカニズムを明らかにした。(2)に関しては、(1)で明らかにした素子構造に対して、電界誘起反強磁性スピン反転の印加磁場強度依存性を検討し、交換磁気異方性と反強磁性体の磁気異方性のみを考慮した従来のモデルでは説明不可能な、新しい項の存在を明らかにした。本成果については、現在論文投稿準備中である。(3)については、平成28年度にSPring-8において走査型XMCD顕微鏡による微細加工試料に対する磁区構造観察、低温・強磁場(<1.5 T)下での極磁区構造観察が可能な磁気光学 Kerr顕微鏡の整備を完了させ、上記の積層膜に対する磁場下での磁化反転過程の可視化、一定磁場下での反転磁区生成の可視化が可能である技術を構築した。平成29年度は、これらの知見を基にして、パルス電圧下でのドメイン構造の変化を直接的に可視化するステージに移行する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、本研究課題の目標である反強磁性ドメインの駆動速度の決定に向けて、走査型XMCD顕微鏡ならびに低温・極磁区Kerr効果顕微鏡を用いたドメイン観察手法の開発、電界駆動可能な素子設計ならびにその電気磁気効果特性の実現、を達成しており、目標達成にむけて着実なステップを踏んでいる。特に、ドメイン駆動速度は外部からの投入エネルギーに依存することが予測されるため、電気磁気効果によるスタティックな外場下での反強磁性ドメインの反転挙動を定量的に明らかにしたこと(論文投稿準備中)、高い交換バイアスとてい保磁力が共存できる素子構造の開発(論文掲載済み)は、順調な進呈の代表的な成果の一つである。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に開発・整備した走査型XMCD顕微鏡、低温・極磁区Kerr効果顕微鏡と開発した素子を用いて、反強磁性ドメインの駆動速度を実計測するステージに移行する。また、界面交換結合エネルギー、素子膜厚などを変化させた種々の素子に対して、同様に検討を進めることで、ドメイン駆動速度のエネルギー論的解釈を進める。 平成29年度は、前年度までに引き続き、大阪大学での研究を主柱として、SPring-8との連携関係も重視しつつ、効率的に研究を推進する。(研究体制に変更はない)
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