研究課題/領域番号 |
16H03835
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
鈴木 哲 兵庫県立大学, 高度産業科学技術研究所, 教授 (00393744)
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研究分担者 |
関根 佳明 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 機能物質科学研究部, 主任研究員 (70393783)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | グラフェン / テラヘルツ |
研究実績の概要 |
NTT物性科学基礎研究所においては、基板上に転写した高品質CVDグラフェンをパタン化しアンテナを作製した。このアンテナは基板をゲート電極として用いることにより、共鳴周波数などの特性が可変である。SiC上グラフェンに代わり転写CVDグラフェンを用いることにより、よりフレキシブルに様々なデバイス構造を作製できると考えられる。また、低温におけるグラフェンアンテナのテラヘルツ吸収特性の測定を開始した。グラフェンパタンのテラヘルツ特性の温度依存性はこれまでほとんど報告されておらず、これ自体が興味深い研究対象であると考えられる。 異動によりNTT物性科学基礎研究所から兵庫県立大学高度産業科学技術研究所に所属が変わった研究代表者は、放射光施設ニュースバルを利用したグラフェンデバイスの評価や高度化の研究を開始した。今年度はグラフェンデバイスの基板として有用な六方晶窒化ホウ素を独自の拡散・析出法を用いて超高真空中で作製することに成功した。これにより、拡散・析出法による六方晶窒化ホウ素の形成過程を真空一貫で放射光X線吸収分光やX線光電子分光により分析することを可能にした。その結果、拡散・析出法によりNi基板上に形成した単原子層六方晶窒化ホウ素は他の手法で形成した場合とは異なり、六方晶窒化ホウ素とNi基板の間に化学結合がない擬似的フリースタンディング状態になっていることが明らかとなった。単原子層六方晶窒化ホウ素の放射光分析もこれまであまり研究例が多くないため、この点からも掘り下げて研究を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
NTT物性科学基礎研究所では、SiC上グラフェンに加え、転写したCVDグラフェンパタンからも特性可変のテラヘルツ特性が得られるようになっており、デバイス作製プロセスが飛躍的に柔軟となった。またテラヘルツ特性の低温測定も可能になっている。一方で、これまで用いていたSiCグラフェンから転写CVDグラフェンに移行する際に必要な技術的ノウハウの蓄積に一定の時間を費やすこととなった。また、グラフェンパタンの多段化が未だ課題として残っている。 研究代表者が今年度NTT物性科学基礎研究所から異動した兵庫県立大学では、六方晶窒化ホウ素成長の放射光を用いた真空一貫測定が立ち上がったところである。拡散・析出法によりNi上に形成した六方晶窒化ホウ素が他の手法とは全く異なり擬似的フリースタンディング状態になっているなど新たな知見が得られている。今後この六方晶窒化ホウ素とグラフェンのハイブリッド化を行える段階である。
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今後の研究の推進方策 |
これまで主にSiC上グラフェンを用いて本研究を遂行してきたが、今年度は各種基板上に転写したCVDグラフェンのデバイス化を進めた。今後はより柔軟に各種プロセスに対応可能な転写CVDグラフェンを積極的に利用していくつもりである。またグラフェンパタンのテラヘルツ特性の温度依存性自体の報告がこれまでほとんど見当たらないため、本研究の一環としてこの点も掘り下げて行きたい。キャリア寿命やプラズモン寿命の温度依存性などについて興味深い結果が得られると期待される。 また研究代表者の異動に伴って利用できるようになった放射光施設ニュースバルを積極的に利用した新たな研究の展開を引き続き推進して行く予定である。今年度、放射光分析ビームラインのエンドステーションで単原子層六方晶窒化ホウ素の作製が可能となったため、これとグラフェンのハイブリッド化によるデバイスの高品質化を検討していく。また放射光を利用した高度分析技術の利用に留まらず、放射光を積極的に利用した成長技術の開発も進めていきたい。
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