昨年度に引き続き、ナノ微粒子による膜モルフォジェネシスの誘導に重点を置いて研究を推進した。具体的な研究成果を以下に述べる。まず、ナノ微粒子の運動エネルギーを脂質膜の形態変化に変換する手法の確立を引き続き行った。先行研究において確立した、脂質ナノチューブのみならず他の膜形態の形成制御について重点的に検討した。生体系において は、細胞膜骨格がその構造を変えることで膜に歪みが生じ、その膜構造変化を誘起することが指摘されている。このよな膜モルフォジェネシス制御系を規範とした系の確立を目指し、昨年度に引き続き脂質膜層に対して、外部場によりナノ微粒子を貫通させることで、ナノ微粒子表面を脂質膜で被覆する新しい手法の確立を目指す研究をおこなった。具体的には、従来ナノ微粒子を脂質膜で効率的に被覆する簡便な手法が見出されていないのに対し、本手法を適用することで、ナノ微粒子表面に脂質膜を被覆する極めて簡便な手法を見いだした。本手法は、微粒子表面の物性、機能改変などへの展開が期待される点で興味深い。それに加え、磁性ナノ粒子を、外部磁場により誘導し、脂質膜層を透過させることで磁性ナノ微粒子を脂質膜で被覆する手法についても検討を行った。また、昨年度見出した脂質膜固定化マイクロ微粒子に対して、脂質膜と相互作用する両親媒性高分子を添加することで、微粒子表面から脂質ナノチューブを生成させる手法についてもさらに検討を行い、ある種の熱応答性両親媒性高分子を添加することで脂質ナノチューブが効率的に進展できることを見出し、その数や長さについての定量評価を行った。
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