研究課題/領域番号 |
16H03854
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
永崎 洋 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 首席研究員 (20242018)
|
研究分担者 |
鬼頭 聖 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 主任研究員 (30356886)
吉田 良行 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 研究グループ長 (50415767)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 銅酸化物高温超伝導体 / 単結晶育成 / 超伝導デバイス |
研究実績の概要 |
本研究では、現存する超伝導体の中で最も高い134Kに至る超伝導転移温度(Tc)を有する水銀(Hg)系銅酸化物超伝導体HgBa2Can-1CunO2n+2(n=2,3) の純良単結晶育成技術を確立すること、更に、得られた単結晶試料の基礎物性評価を行うことによって、同物質の示す高いTcの原因を探るとともに、その特徴を活かした新たな超伝導応用の可能性を切り拓くことをその目的とする。同物質は、構成要素である水銀(Hg)の毒性と高い蒸気圧のために、1994年の発見以来、系統的な研究はほぼ手つかずであった。 本研究では、最高のTcを有するHg系銅酸化物高温超伝導体HgBa2Can-1CunO2n+2 (n = 1-3) を対象とし、高品質 (Tc > 130 K, n = 3) かつ大型 (> 1 mm3) の単結晶育成技術を確立することを目的として研究を行った。 研究初年度にあたるH28年度は、高純度前駆体の調製、および、閉鎖雰囲気下における結晶成長 手法の確立に注力した。具体的には、Hg系銅酸化物単結晶育成に最適な出発原料、前駆体として、良質なReBa2CaCu2Oyの調製手法を確立するとともに、HgOを安全に調製するためのグローブボックスの設備を行った。更に、HgOの蒸気圧を抑えるための手法として、SUS封管と石英ガラス管の2重封管法を試み、同手法を用いることで、Hg系銅酸化物超伝導体の単結晶育成を安全かつ再現性良く行うことが出来ることを実証した。同手法を用いることで、これまでにTc=134Kを有し、大きさ1mm*1mm*0.05mmまでの単結晶を育成することに成功した。今後は、育成条件を最適化することで、単結晶の大型化を図るとともに、得られた試料の特性評価を開始する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画初年度の目標であった、(1)Hg系銅酸化物単結晶育成に最適な出発原料、前駆体の調製手法の確立、(2)HgOを安全に調製するためのグローブボックスの設計と試料混合法の最適化 、および、(3) HgOの蒸気圧を抑えるための防爆容器の開発と最適化 を順調に達成した。これらの要素技術を組み合わせることで、目的物質の単結晶育成を安全かつ再現性良く行うことが出来ることを実証し、Tc=134Kを有し、大きさ1mm*1mm*0.05mmまでの単結晶を育成することに成功した。これまでの成果は先行研究の結果を既に上回っており、また、これまでの試みの過程から、試料の大型化に向けた方針も複数立てることが出来た。
|
今後の研究の推進方策 |
H29年度は、結晶育成条件の最適化により、単結晶試料の大型化を図る。具体的には、(1)前駆体の化学組成の調整、特にReとHgの混合比の最適化、(2)育成容器の組み合わせの検討、等を行う。また、得られた試料を用いた超伝導特性評価(STM、ARPES、光学反射率測定、ラマン散乱、NMR等)を、共同研究者とともに開始する。
|