研究課題
本年度は、パルスレーザー堆積法を用いて5V級正極活物質LiNi0.5Mn1.5O4(以下、LNMO)のエピタキシャル薄膜を作製し、さらには固体電解質Li3PO4(以下、LPO)ならびに負極Liの薄膜を積層して薄膜型の全固体電池を作製し、その電気化学評価を行った。その結果、サイクリックボルタンメトリー(CV)、充放電測定により、Niの2価⇔3価(Vocv =4.65 V)、3価⇔4価(Vocv=4.75 V)の酸化還元反応ピークを観測し、100サイクルまで容量劣化することなく充放電反応が正しく行われることを確認した。薄膜電池の良好な電池動作を確認した後、交流インピーダンス測定を行い、LPO/LNMO界面抵抗の定量評価を行った。その結果、反応電位におけるLPO/LNMO界面抵抗はおよそ5 Ωcm2であり、これまでに報告されている液体電解質を用いたときの電解質/電極界面抵抗を下回ることが分かった。つづいて、低抵抗界面を有する薄膜電池を用いて高速充放電試験を行った。1C、10C、100Cでの放電容量に大きな変化は見られなかったが、1000Cの放電容量は1Cのときの70%まで減少し、3600Cではほぼゼロとなった。1000C、3600Cでの放電曲線とみると、放電開始とともに電位が降下していることから、高Cレートにおける放電容量の低下は、固体電解質LPOの高いバルク抵抗に起因するIRドロップが原因と考えられる。この大きなIRドロップの影響を抑制するため、70度での放電特性を調べたところ、1000Cで1Cのときの70%、3600Cで50%の放電容量を得ることができた。また、3600Cで100サイクルの充放電を繰り返しても、充電および放電の容量変化はまったく観測されなかった。電極/電解質界面の界面抵抗を低減することにより、全固体電池の高速充放電が実現可能であることを実証することができた。
1: 当初の計画以上に進展している
5V級正極LNMCOを用いた薄膜型全固体電池を作製し、固体電解質LPO/正極LNMO界面において、極めて低い界面抵抗を実現することができた。また、低抵抗界面を有する薄膜電池では、3600Cでの高速充放電においておよそ50%の容量を得ることができた。
固体電解質・電極界面において、非常に小さな界面抵抗を達成するとともに、その設計指針を得ることができた。今後は、その成果をもとに負極材料のLiTi2O4を用いた全固体電池に関する研究を行う。特に、活物質の結晶性や粒界構造が電池特性に与える影響に着目し研究を行う。
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