研究課題/領域番号 |
16H03869
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
安井 寛治 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (70126481)
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研究分担者 |
加藤 有行 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (10303190)
田中 久仁彦 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (30334692)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 金属酸化物薄膜 / 化学気相成長法 / 触媒反応 / 単分子層成長制御 |
研究実績の概要 |
初年度であるH28年度の第一の目的は、触媒反応支援CVD法において、原料ガスのパルス供給によって金属酸化物結晶膜の成長を単分子層厚で制御をする技術を達成することである。具体的には酸化亜鉛(ZnO)結晶膜のc軸成長において、亜鉛原料ガスの供給を高速電磁弁を用いてミリ秒のパルス幅に設定することで1パルス当りの堆積速度を単分子層厚さにすることである。高速電磁弁を用いてパルス幅を1ms及び2msにし反応チャンバー内に供給、触媒反応により生成した高エネルギー水分子との反応によりZnOプリカーサを形成、基板にパルス的に供給することで0.19nm/pulse及び0.38nm/pulseの堆積制御に成功した。この技術により数nm層の積層構造で形成される超格子構造デバイスの作製の実現に一歩前進した。 続いてZnO系超格子構造デバイスの作製を実現するため、Mgの添加によるMgZnO結晶膜の成長とその単分子層厚成長制御を試みているところである。現在既にMgの添加には成功しており供給ガスの制御により組成制御に取り込んでいる。続いてMg原料ガスのパルスガス供給によりMgZnOの原子層厚制御に成功すれば、MgZnO/ZnO/MgZnO...積層構造による超格子構造デバイスの作成が実現出来る。 並行して超格子構造デバイスにおいて問題になるZnOの自発分極による量子井戸内の電子・正孔の分離の問題を解決することを目指して非極性ZnO膜の成長実験も進めている。R面サファイア基板上への成長の結果、A面ZnO膜の成長に成功すると共に、フォトルミネッセンス特性において強い偏光特性が見られこれまでに報告されているZnOナノロッドよりも大きな偏光角依存性を見出した。この特性は新しい光制御技術に結びつく可能性があり更に研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H28年度は第一の目標であった単分子層厚の成長制御をZnO結晶を用いて成功しており、今後ZnO系超格子デバイス構造を実現するため、Mgの添加によるMgZnO結晶膜の成長とその単分子層厚成長制御を試みているところである。並行して超格子構造デバイスにおいて発光効率が向上すると期待される非極性ZnO膜の成長についても試みたところフォトルミネッセンス特性に強い偏光特性が見られ、これまでに報告されているZnOナノロッドよりも大きな偏光角依存性を見出した。このように当初の第一目標の実現に加え、並行して行った非極性ZnO結晶膜の成長と特性評価において新たな知見を得ることが出来、本年度はおおむね順調に研究が進展したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度は、H28年度後半に開始したMgの添加によるMgZnO結晶膜の成長とその単分子層厚成長制御の実験を進め、Mgの組成制御を実現すると共にMgZnO/ZnO超格子デバイス構造の実現に向けて研究を進めてゆく予定である。並行して超格子デバイスの発光効率の向上を目指して非極性ZnO膜の特性評価と結晶性向上に向けた実験を行う予定である。更にpn接合デバイスの実現に向けてZnO膜へのアクセプタードーピングを試みる。これまでアクセプターとして有望な窒素のドーピングを目指し、N2Oガス及びNOガスの添加実験を行ってきたが結晶性への影響は確認出来たものの、明確な窒素の取り込みやp型結晶膜を得るには至っていない。これは酸化窒素ガスと水分子との反応性の低さが理由であると考えられ、まず加熱金属触媒体表面で酸化窒素ガスをクラッキングし、基板に供給する手法を試みる。金属触媒体としては、酸素雰囲気中で安定なイリジウムワイアを用いる。加熱したイリジウムワイア表面でのクラッキングより窒素原子の生成を行い、ZnO膜成長表面に供給することで窒素のドーピングを実現する。膜堆積後アニールによりP型化を阻害すると考えられる水素原子の脱離を促し、伝導型の転換を促す実験を進める予定である。
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