研究課題/領域番号 |
16H03873
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
小嗣 真人 東京理科大学, 基礎工学部材料工学科, 講師 (60397990)
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研究分担者 |
三浦 良雄 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 准教授 (10361198)
水口 将輝 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (50397759)
小森 文夫 東京大学, 物性研究所, 教授 (60170388)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 超格子 / 磁気異方性 / パルスレーザー蒸着法 |
研究実績の概要 |
本研究ではレアメタルフリーで高い磁気異方性が期待されるL10型FeCo合金の創製を目標に、パルスレーザー蒸着装置による単原子交互積層法を用いて試料作製を行うと共に、物性解析を実施した。今年度は第一原理計算の結果を踏まえて構造および元素を再検討し、バッファー層をCuからNiに置換することで、構造の安定化と磁気特性の向上を試みた。実験ではYAGレーザーを光源とするPLD装置を用いてMgO基板をアニール処理後、基板温度80℃でFe(1 nm), Au(20 nm)を蒸着し、その上に300℃でCu(50 nm)を蒸着して下地層を作製した。その後、単原子交互積層法を用いて室温(RT)でFeCo層7 ML、バッファー層(Cu or Ni)3 MLを1 unitとし、計30 ML蒸着した。表面の結晶性の評価にはRHEED、表面の平坦性の評価にはAFM、構造評価には放射光XRD、磁気特性評価にはSQUIDを用いた。表面の結晶性および平坦性は用いたバッファー層により異なり、Niを用いた方がより結晶性が良く、かつ平坦な膜が得られた。また、RHEEDの解析からバッファー層をCuからNiに置換してもB2転移は起こらず、L10構造を維持できていることが示唆された。放射光XRDを用いて結晶構造を詳細に調査したところ、L10-FeCo(Ni-buffer)のみに微弱な超格子反射が確認できた。SQUIDを用いてL10-FeCo(Ni-buffer)の磁化曲線を測定した。その結果、バッファー層の置換により飽和磁化Msが950 emu/ccから1300 emu/ccに向上し、磁気異方性エネルギーKuが1.97 × 106 erg/ccから2.97 × 106 erg/ccに向上することが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は昨年度の懸案事項であったCuバッファー層の問題に対して有効な解決策を見出すことができたことから概ね順調に進展しているものと考えている。従来法ではCuバッファ層の挿入により、L10構造を安定維持できることを確認できていたが、磁気モーメントと磁気異方性の低下が課題となっていた。今年度の調査により磁気モーメントと磁気異方性の両方がNiバッファ層の利用によって向上することが確認できたことから、最終目標である磁気特性を実現するための突破口が開けたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究の結果、CuからNiへの置換により磁気モーメントおよび磁気異方性の両方が向上することを実験的に確認することができた。磁気モーメントの向上は、バッファー層を強磁性のNiに置換したことに起因していると考えられる。また磁気異方性の向上は、結晶性および平坦性の向上や、長距離規則度の向上に起因していると推察される。今後は、更なる磁気モーメント, 磁気異方性の向上を目指し、基板温度、Niの層数、表面のサーファクタント効果、全体の膜厚を適宜変化させて調査を進めて行く予定にしている。
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