研究課題/領域番号 |
16H03883
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
川田 善正 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (70221900)
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研究分担者 |
居波 渉 静岡大学, 電子工学研究所, 准教授 (30542815)
真田 俊之 静岡大学, 工学部, 准教授 (50403978)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ファインバブル / 光学顕微鏡 / 電子顕微鏡 / ナノ計測 / 光散乱計測 |
研究実績の概要 |
本研究では、液中におけるマイクローナノスケールのファインバブルを高分解能かつ高感度に観察可能な電子線励起発光顕微鏡を開発するとともに、コロイド粒子や生体試料ななど液中のソフトマテリアルを解析する手法を確立し、洗浄、潤滑効果、気泡影剤、燃料電池、医療・薬品、環境などさまざまな応用分野へ展開することを目的として、基礎解析およびシステム開発を行なってきた。マイクローナノスケールのバブルは、その体積に比して表面積が大きく表面電位が高いため、界面での反応活性が高く、液中に長期間存在するとして、新しい応用展開が期待されている。本研究では、超解像顕微鏡の分解能を評価するための数値解析手法として、電子線散乱をモンテカルロ・シミュレーション、励起された発光の伝搬を有限差分時間領域法(FDTD法)で解析するマルチフィジックスに基づく新しい解析手法を開発する。開発した手法を用いて、真空と大気圧の分離膜および液中の試料内部における電子線の散乱および透過特性を評価し、顕微鏡システムの分解能、結像特性について検討する。 また実際にファインバブルを観察する手法として、集束電子線を液中のバブルに直接照射しプラズマ発光させ、光学顕微鏡の限界を超えた超解像を実現する。超解像を実現するために、光学顕微鏡と電子顕微鏡を融合した基礎システムを開発する。本手法では、液中のファインバブルを直接観察でき、分光計測と組み合わせれば内部物質の状態を解析可能である。さらに、レーザー顕微鏡と融合したシステムを開発する。レーザー顕微鏡と組み合わせることにより、高コントラストかつ高分解能で溶液内の構造を3次元的に観察することができ、より詳細なメカニズムの検討が可能である。電子線の照射により、バブルの表面電荷を制御し、その反応活性を制御することについて検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で開発する超解像顕微鏡の分解能を評価するための数値解析手法を開発を進めた。電子線散乱をモンテカルロ・シミュレーション、励起された発光の伝搬を有限差分時間領域法(FDTD法)で解析し、電子散乱および光散乱を組み込んだ新しい解析法を開発した。真空と大気圧の分離膜および液中の試料内部における電子線の散乱および透過特性を評価し、顕微鏡システムの分解能、結像特性について検討した。 これらの解析結果から、真空と大気圧の分離膜の材料、膜厚、加速電圧などによる電子線の散乱特性を解析し、集束スポットの拡がりなどを理論的に明らかにし、最適な照射条件を求め、実効的な分解能を評価した。また、電子線照射による発光強度の大きさおよび検出光強度を求め、高い信号対雑音比を実現するための光検出器の感度、対物レンズの開口数などを最適化を行なった。 液中のファインバブルを観察可能な電子線励起超解像顕微鏡の基礎システムを開発した。これには、現有の走査型電子顕微鏡(SEM)を改良することにより実現した。加速電圧 10 kV で 3 nm の集束スポットを持ち、100 frame/s で電子線を走査可能な基礎システムを開発した。さまざまな液中試料の観察に対応するために、倒立型の構成とし、開放空間へ電子を照射可能なシステムとする。真空と大気圧の分離膜の破損に対応できるように、真空度をモニターする安全装置をシステムに組み込んだ。 真空と大気圧を分離するための試料台部分を新たに設計した。真空と大気圧はSiN薄膜で分離し、電 子線を通過させて試料に照射する構成とした。真空シールはOリングを使用し、簡単に試料を交換できる構成とした。
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今後の研究の推進方策 |
開発した基礎実験により得られた結像特性の解析結果を数値解析手法にもフィードバックし、開発した数値解析手法の高度化を検討する。とくに、気液界面での化学的および電磁気学的な相互作用を解析手法の中に組み込むための拡張について検討を行ない、さまざまな応用分野への展開可能性について検討する。 開発する数値解析手法の結果から電子線照射による蛍光の発光やプラズマ発光強度を検出する光学顕微鏡システムを設計し、試作する。まず、蛍光性微粒子などの標準試料や蛍光マーカー、トレーサーを用いて試作 システムの空間分解能、時間分解能、結像特性などを評価する。真空と大気圧分離する膜を通して、液中の蛍光性ナノ粒子に電子線を照射し、その発光強度を検出する。電子線を走査することによりナノ粒子の観察像を求め、開発した超解像顕微鏡の分解能を評価する。 さらにレーザー走査顕微鏡と組み合わせて、電子線励起超解像画像とレーザー励起画像を同時に取得可能な顕微鏡システムの設計・試作を行なう。レーザー顕微鏡と融合することにより、光励起による観察像と電子線励起による観察像を同時に取得することが可能となる。したがって、光励起による観察像と電子線励起による観察像を直接比較検討することができ、それぞれの結像特性の違いを明らかにすることが可能となる。 高速かつ高機能、高感度な撮像素子を用いて、高いコントラストで観察可能な顕微鏡システムを設計する。試料を電子線とレ ーザー光で同時または個別に励起することにより、プローブに対する反応を観察することが可能となり、より詳細に試料と液体との界面での反応メカニズムを解析することが可能となる。さらに、ファインバブルの応用研究についても検討する。
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