研究課題/領域番号 |
16H03888
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中村 大輔 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (40444864)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 微小共振器 / ウィスパリングギャラリーモード / 光渦レーザープロセス |
研究実績の概要 |
光渦は軌道角運動量と位相特異点によるドーナツ状のビームプロファイルをもつ光波である。本研究は、光渦レーザープロセスによる酸化亜鉛(ZnO)ナノ・マイクロ結晶球のオンデマンド作製と、これまでにない新たな不純物ドーピング手法を確立し、ドープZnO 微結晶球による紫外光領域光電子デバイス分野を開拓することを目指す。 H29年度は、構築した光渦レーザー照射系および高速度カメラ観察システムを用いて、まずはSiターゲットに対してレーザー出力を変調することでドロップレットのサイズを制御できることを見出した。具体的にはパルスエネルギーを0.1~0.7 mJとすることで直径約4~8 umの結晶球のサイズ制御に成功した。ZnOマイクロ結晶球も同様にサイズの制御が可能であることを確認した。位置制御について、透明基板を用いてターゲット表面から直線飛翔するドロップレットを捕捉し、約2.9°の飛翔角度範囲内にマイクロ結晶球の捕捉位置を制御できることを確認した。 作製したZnOマイクロ結晶球の発光特性について、微動ステージを用いた顕微分光装置にて調査した結果、励起光の照射位置や照射角度によってウィスパリングギャラリーモード(WGM)レーザー発振のピーク波長が変化することを確認した。これは、結晶球内で形成される光ループが空間的に変化したことを示唆しており、センサ応用に展開する上で重要な結果と言える。さらに、励起レーザー波長を短波長化(Nd:YAGレーザー第三高調波(355 nm)からArFエキシマレーザー(193 nm))することでWGMスペクトルのWGMスペクトル幅が減少することを発見した。また、HoドープZnOマイクロ結晶球の作製と紫外WGMレーザー発振を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H29年度の当初計画は次の通りである。 (1)光渦パルスレーザーによるZnOマイクロ結晶球のサイズ制御の実現、(2)オンデマンド作製を指向した位置制御の可能性の調査、(3)ドープZnOマイクロ結晶球の構造解析と発光特性の評価、(4)雰囲気圧力の制御や各種ガスを導入し、レーザー生成プラズマの能動的な制御を実現する。このうち、(1)~(3)については予定通りに実施された。特に、(1)、(2)についてはレーザー出力によるドロップレットのサイズ制御と直線飛翔するマイクロ結晶球の捕捉における基本的な条件を確立し、今後の実験を進める上での基礎を確立できた。(4)についてはレーザー加熱機構の追加により新規チャンバ設計が複雑になったため納入が年度後半となったために予備的な実験に留まったが、ガス圧力の違いによって飛散するドロップレットのサイズや堆積量が変化する様子を確認できた。以上のことから全体としてほぼ順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
光渦レーザーによってSiやZnOのドロップレットの位置制御とサイズ制御が可能となることを実証したが、デバイス応用にはさらなる制御性の向上が重要となる。現在は直線飛翔するドロップレットを透明基板で捕捉しているが、レーザー生成プラズマによる影響を受けることが懸念される。そこで、光渦レーザーパルスをターゲットに対して斜入射させることで捕捉の自由度を高めることを狙う。実験では、レーザー出力、集光径、パルス数といった実験パラメータを変化させたときのドロップレットの挙動を高速度カメラにて調査する。 不純物ドーピングについて、WGM発振波長の変調を可能とするMgの濃度依存性を詳細に調査する。さらに、紫外WGMレーザー発振を確認したHoドープZnOマイクロ結晶球について異なる励起波長における発光特性の調査を行なう。具体的な励起用レーザーにはNd:YAGレーザー第三高調波(355 nm)、Nd:YAGレーザー第四高調波(266 nm)、He-Cdレーザー(325 nm)、ArFエキシマレーザー(193 nm)を用いる。さらに、H29年度に導入した雰囲気ガス圧力を制御した状態で光渦レーザー照射挙動を詳細に観察できる新規チャンバにて各条件におけるドロップレット飛翔の観察を試みる。
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