研究課題
(1)スピングラス解探索シミュレータ設計(可視域プラズモン共鳴):プラズモン粒子間相互作用を利用したスピングラスマシンの動作アルゴリズムを確立した。ある程度優れた解に到達するための計算速度を評価するため、既存の焼きなまし法と比較し、約一桁の高速化、ならびに問題サイズ(スピン数)が大きくなるほど本アルゴリズムが有利であることを確認した。実装化に向け、2つの隣接する金ナノロッドの相対位置により、正・負の相互作用を導入する際の最適な配置を決定した。(2)スピングラス解探索シミュレータ設計(赤外フォノンポラリトン共鳴):SiC上にGeSbTe薄膜を成膜し、パッチ構造形成、ならびに局所的な相変化誘起により波長10um近傍のSiCフォノンポラリトンの空間閉じ込め、ならびに隣接する局在フォノンポラリトン間の相互作用制御を実験により実証した。相互作用を最適化するためのパッチ構造サイズ、局所相変化領域サイズを決定した。(3)赤外プラズモン・フォノンポラリトン共鳴疑似サブ波長粒子の作製と分光計測:GeSbTeとGeCuTeの2層構造を作製し、それぞれをフォノンポラリトン閉じ込め層(疑似サブ波長粒子)、相互作用制御層として機能させるための基礎実験を行った。GeCuTeの相状態に応じて、GeSbTeによるフォノン閉じ込めを制御できることを確認した。(4)相変化パターンド電極によるナノ粒子操作:相変化薄膜上を浮遊する帯電金ナノ粒子の運動制御を、相状態のスイッチにより実現した。結晶相の方がより強く粒子を引き付けることを確認した。また、ナノ粒子の直接的加熱、あるいは粒子のレンズ効果による相変化薄膜の加熱により対流を誘起し、周辺の粒子の運動を制御可能であることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
スピングラスマシンアルゴリズムの開発は順調に進んでおり、アルゴリズム自体が既存の方法よりも圧倒的に優れていることを見出し、想定以上の成果である。SiCによるフォノンポラリトン生成と閉じ込め、相互作用制御、ならびに相変化薄膜上の水中浮遊粒子の制御も順調に進んでいる。プラズモン粒子(金ナノロッド)間相互作用、フォノンポラリトン(相変化閉じ込めSiCフォノンポラリトン)間相互作用において、正、負の相互作用を実現するために、さらに若干の時間を要する。
(1)スピングラス解探索アルゴリズムの高度化:金属ナノ粒子間相互作用を利用したスピングラス解探索シミュレータを、結合振動子系によってモデル化し、純粋にアルゴリズムとしての性能向上、特にこれまでよりもより優れた解へ高速で到達することを目指す。(2)スピングラス解探索シミュレータ設計・作製I:金属ナノ粒子を等間隔に配置し、粒子間隙を相変化材料で充填する。金属ナノ粒子として、昨年度まで検討してきた金ナノロッドに加え、新たに銀ナノディスクの利用も検討し、共鳴波長の赤外域への長波長化を試みる。金属ナノ粒子同士を十分に接近させることにより系全体にコヒーレントな励起を誘起し、空間相関を形成する。(3)スピングラス解探索シミュレータ設計・作製II:空間相関形成の長距離化を主たる目的として、赤外領域でのフォノン・ポラリトンによる共鳴発現を利用する。昨年から着手しているSiCフォノンポラリトンのGeSbTe層による閉じ込めと制御を継続する。アモルファス薄膜に対して、サブミクロンの領域をディスク状に結晶化することにより、その直下のSiCのフォノン・ポラリトン励起と結合し、局在プラズモンと同様の共鳴を有する赤外共鳴疑似サブ波長粒子を形成する。相互作用制御層として引き続きGeCuTe薄膜の利用を予定しているが、光学コントラストを向上させるため、新しい相変化材料の探索も実施する。(4)相変化パターンド電極によるナノ粒子操作:相変化パターンド電極の作製と金ナノ粒子トラップの実験を継続する。ITO基板にGeSbTeを成膜し、直径200nm程度のナノビーズをスペーサーとしてサンドイッチ構造を作製する。空隙に金ナノ粒子を含む水滴を挿入し、電極下でのトラッピングを試行する。
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Nano Futures
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Applied Physics A
巻: 122 ページ: 216/1-6
10.1007/s00339-016-9764-9
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Japanese Journal of Applied Physics
巻: 55 ページ: 107001/1-5
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