研究課題/領域番号 |
16H03889
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
斎木 敏治 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (70261196)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | スピングラス / プラズモン / 相変化材料 / フォノンポラリトン / フラストレーション |
研究実績の概要 |
(1)スピングラス解探索アルゴリズムの高度化:金属ナノ粒子間相互作用を利用したスピングラス解探索シミュレータを、結合振動子系によってモデル化し、アルゴリズムとしての性能を評価した。結合振動子アルゴリズムと従来のシミュレーテッドアニーリングを組み合わせ、適切に接続することにより、計算の高速化と、より良い解への到達が両立することが確認された。また、最低固有状態の振動子の振幅とスピン配置の安定性の関係について考察し、振幅が大きい振動子ほど、それに対応するスピンはエネルギー的に安定であるという強い相関が見られた。 (2)スピングラス解探索シミュレータ設計・作製: SiCフォノンポラリトンのGeSbTe層による閉じ込めと制御を継続した。1umサイズのGeSbTeパッチ構造を作製し、その直下のSiCフォノンポラリトンをパッチ構造内に閉じ込めた。また、パッチ構造を並列化し、隣り合う閉じ込めフォノンポラリトン間の相互作用をパッチ間距離によって制御できることを確認した。並行して、GeSbTe/GeCuTe二層構造の光学応答評価を継続して実施した。GeCuTeの相変化領域のパターニングによってGeSbTeの相変化閾値、コントラストを制御でき、熱的干渉も起こらないことを確認した。 (3)水中閉じ込め粒子を利用したスピングラス的挙動の発現:2枚のガラス基板で構成される2次元マイクロチャネルに閉じ込めたポリスチレン粒子の結晶構造形成を利用し、スピングラス的挙動の物理実装を実施した。一方のガラス基板の内壁にGeSbTe薄膜を成膜し、レーザ照射による対流発生源として使用した。対流によって粒子の集団を形成し、さらにレーザ強度によって結晶構造を制御した。適切なレーザ強度の場合にbuckling相が発現し、フラストレーションをもつスピングラス系と等価な挙動を示すことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スピングラスマシンアルゴリズムの改良が進み、アナログ的解法に特徴的な情報が得られることが明らかとなり、想定以上の成果である。SiCによるフォノンポラリトン生成と閉じ込め、相互作用制御においては、予想以上にGeSbTeによるダンピングが大きく、膜厚やパッチ構造作製方法の改善を必要とする。水中閉じ込め粒子の結晶化とその制御、スピングラス的挙動の発現も想定以上の成果である。
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今後の研究の推進方策 |
概ね当初の計画通り進める。水中閉じ込め粒子の結晶化とその制御、スピングラス的挙動の発現は想定以上の結果が得られており、理論的予測との比較を早急に実施するなど、重点的に推進する。
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