タンパク質等の生体高分子は、生命活動を維持する為に極めて重要な役割を担っているが、タンパク質が発現する生体機能はその3次元立体構造(コンフォメーション)に強く依存する。コンフォメーションの形成や変化には、巨視的な協同的運動である低周波振動モードが関与しており、その振動周波数はTHz(テラヘルツ、1012 Hz)領域に存在している。 本研究の目的は、超高強度かつ周波数可変なコヒーレントテラヘルツ光源を用いて、タンパク質の低周波協同振動モードを共鳴的に強励振し、熱揺らぎを超えてコンフォメーション遷移を誘起し、更にはその制御に挑戦する事である。 今年度は主に、タンパク質の低周波協同振動モードを励振するために最適なテラヘルツ光源の開発に取り組んだ。シミュレーション等によると多くの低周波協同振動モードは、0.3~2 THz辺りの周波数領域に存在していると考えられている。従って、ニオブ酸リチウム結晶からの1 THz近傍のテラヘルツ光出力を増大させる為に、マイクロチップレーザーからの励起光と、外部共振器半導体レーザーからの注入光エネルギーを増幅し、パワー密度は保持したまま、ビーム径を拡大してニオブ酸リチウム結晶へ入射した。 これにより結晶内における励起光と注入光、波長の長いサブテラヘルツ光との相互作用体積が増大し、周波数1THz近傍のテラヘルツ光出力増大を確認できた。さらに、有機DAST結晶の2次非線形感受率成分d12を利用したチェレンコフ位相整合による高強度テラヘルツ光出力法の検討も新しく行った。
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