研究課題/領域番号 |
16H03893
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
豊田 浩孝 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (70207653)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 大気圧プラズマ / マイクロ波プラズマ / プラズマCVD / プラズマ加工 |
研究実績の概要 |
本研究は、円環導波管内に伝搬する進行波で長尺均一なプラズマを生成する新方式の大気圧マイクロ波プラズマ源に改良を施し希ガスを用いない100%分子ガスで長尺大気圧プラズマを生成することで、幅広の大気圧高密度ラジカル源を実現し、応用プロセスへの展開を図ることを目的としている。 応用研究のひとつとして、O2大気圧長尺プラズマを用いて本プラズマ源を大気圧プラズマCVD法に応用し、樹脂フィルム上への幅広SiO2バリア膜の均一堆積を目指した研究を行っており、本年度は基礎実験用の小型マイクロ波プラズマ装置を用いて大気圧O2マイクロ波プラズマを生成し、TEOSガスを用いた大気圧環境下でのSiO2薄膜堆積研究を進めた。その結果、大気圧環境における成膜に成功した。さらに、FT-IR装置を用いた膜質評価をおこない、C膜混入の少ない膜が得られていることが明らかとなった。 また、100%分子ガスを用いた長尺プラズマ生成をめざし、導波管構造の検討をおこなった。シミュレーション計算を援用して調査を行ったところ、導波管厚さを薄くすることで導波管内表面電流およびスロット内部電界を強め、分子ガス放電の長尺化へ高い効果が得られることが分かった。さらにこの結果をもとに30cmサイズのプラズマ生成装置の改良をおこなったところ、100%N2プラズマにおいて明確なプラズマ生成易化の傾向が確認された。この結果は1m長さの分子ガスプラズマを生成するための重要な指針となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、円環導波管内に伝搬する進行波で長尺均一なプラズマを生成する新方式の大気圧マイクロ波プラズマ源に改良を施し希ガスを用いない100%分子ガスで長尺大気圧プラズマを生成することで、幅広の大気圧高密度ラジカル源を実現し、応用プロセスへの展開を図ることを目的としている。 本研究目的を達成するには、100%分子ガスによって長尺プラズマを生成することが第一に重要な課題である。本年度は100%分子ガスを用いた長尺プラズマ生成をめざし、導波管構造の検討をおこなった。シミュレーション計算を援用して調査を行ったところ、導波管厚さを薄くすることで導波管内表面電流およびスロット内部電界を強め、分子ガス放電の長尺化へ高い効果が得られることが分かった。この結果をもとに30cmサイズのプラズマ生成装置の改良をおこなったところ、100%N2プラズマにおいて明確なプラズマ生成易化の傾向が確認された。この結果は1m長さの分子ガスプラズマを生成するための重要な指針となり今後の展開の足掛かりとなった。 また、応用研究のひとつとして、O2大気圧長尺プラズマを用いて本プラズマ源を大気圧プラズマCVD法に応用し、樹脂フィルム上への幅広SiO2バリア膜の均一堆積を目指した研究を行っており、本年度は基礎実験装置を用いたTEOSガスを用いたSiO2薄膜堆積研究を進めた。その結果、大気圧環境における成膜に成功するとともに、その膜質評価を行うことができた。膜中にOH結合が存在するなど膜質にはまだ課題が多く残されているが、今後の膜特性改良に向けた足がかりになったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究目的の重要な課題の一つである100%分子ガスによる長尺プラズマ生成については、本年度の研究によりスロット近傍での表面電流を増大させることが分子ガスプラズマ生成の安定化に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。このことは導入したマイクロ波電力を空間的に制御し、スロット近傍においてのみ表面電流を早大させることによって。よりエネルギーを消費しやすい分子ガスプラズマにおいても希ガスプラズマ生成と同一電力で安定した長尺プラズマ生成が可能であることを示唆している。このことから、今後は導波管内部においてよりプラズマ生成を易化するために、表面電流分布を制御した構造を採用し、さらなる導波管構造の改良を進めていく。すでにその方針については感触を得ており、1m長の100%分子ガスプラズマ生成の達成は可能であると考えている。 また、応用研究のひとつとして、O2大気圧長尺プラズマを用いて本プラズマ源を大気圧プラズマCVD法に応用し、本年度は基礎実験装置を用いたTEOSガスを用いたSiO2薄膜堆積研究を進め、大気圧環境における成膜に成功するとともに、その膜質評価を行うことができた。しかし、得られた膜のC元素混入は少ないものの、膜中にOH結合が存在するなど膜質にはまだ課題が多く残されている。今後は導入する材料ガスをTEOSから他の材料に変更するなどの手法を試み、膜特性改良を進めていきたい。また、単純分子ガスを用いたプラズマ応用研究についても検討をおこなっていきたい。
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