研究課題
植物種子へのプラズマ照射による成長促進効果の世代間伝搬の機構を解明して、プラズマ照射によるエピジェネティック過程の制御についての基礎学理を構築することを目的とする本研究では、(1)プラズマ照射による成長促進効果の世代間伝搬の主要因解明。(2)プラズマから生体への分子輸送機構解明。(3)成長促進が生じる植物の種類の拡大について、4年間で研究する。1年目に当たる平成28年度は、1.プラズマ照射による成長促進効果の世代間伝搬の主要因解明と、2.成長促進が生じる植物の種類の増大について検討した。1.プラズマ照射による、成長促進効果の世代間伝搬の主要因解明では、シロイヌナズナの種子および発芽サンプルに対するマイクロアレイ解析を行い、栽培実験の結果と合わせて考察することで、DNA損傷ではないエピジェネティック過程による成長促進であり、酸化ストレス応答に関する遺伝子発現量が顕著に変化していることを明らかにした。また、従来空気を用いて行っていたプラズマ照射実験について、酸素のみ、窒素のみ、二酸化炭素のみ環境で大気圧プラズマ照射を行った所、空気および酸素を用いたプラズマ照射で顕著な成長促進効果が見られた。この結果はマイクロアレイ解析結果をサポートする結果である。2.成長促進が生じる植物の種類の増大では、プラズマ照射対象を、従来のカイワレとシロイヌナズナから、ブロッコリ、リョクトウ、ダイズ、シカクマメ、ヒマワリ、ヒャクニチソウ、プルメリア、ポテト、イネ、コムギに拡大した。開発したスケーラブルDBDプラズマを用いて、シロイヌナズナと同じ条件での照射では、ブロッコリ、ダイズ、シカクマメ以外の9種類の植物は成長促進することを確認した。この結果は、スケーラブルDBDプラズマの汎用性の高さを示している。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度の検討事項、1.プラズマ照射による成長促進効果の世代間伝搬の主要因解明と、2.成長促進が生じる植物の種類の増大であった。これに対して、世代間伝搬の主要因として、酸化ストレス応答に関わるエピジェネティック過程によることを示唆する結果を、マイクロアレイ解析と栽培実験の結果の考察より明らかにした。また植物の種類を12種類まで拡大し、プラズマ照射による成長促進技術の汎用性の高さを示すことに成功した。以上の成果から概ね順調に進展していると判断した。
本研究で検討する3つの研究項目、(1)プラズマ照射による成長促進効果の世代間伝搬の主要因解明。(2)プラズマから生体への分子輸送機構解明。(3)成長促進が生じる植物の種類の拡大について、平成29年度は、1.プラズマ照射による成長促進効果の世代間伝搬の主要因解明と、2.プラズマから生体への分子輸送機構解明について検討する。1.プラズマプラズマ照射による成長促進効果の世代間伝搬の主要因解明については、シロイヌナズナを対象として、大気圧下で種子にプラズマ照射したサンプルの分子生物学的評価を行う。マイクロアレイ解析やDNAメチル化解析で得られた結果から、重要と考えられる遺伝子のふるまいについて、多世代にわたる変化を明らかにして、世代間伝搬での重要遺伝子やたんぱく質を特定する。2.プラズマから生体への分子輸送機構については、プラズマによるDNA修飾を解析する。得られた結果から、プラズマからDNAへの分子輸送とプラズマから輸送された分子に対するDNA修飾状況を明らかにする。得られた結果と、植物成長促進効果の相関を定量的に明らかにする。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (28件) (うち国際学会 19件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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