研究課題/領域番号 |
16H03895
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
古閑 一憲 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (90315127)
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研究分担者 |
中津 可道 九州大学, 医学研究院, 准教授 (00207820)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | プラズマ農業 / 植物成長促進 / DBDプラズマ / シロイヌナズナ / 世代間伝搬 |
研究実績の概要 |
植物種子へのプラズマ照射による成長促進効果の世代間伝搬の機構を解明して、プラズマ照射によるエピジェネティック過程の制御についての基礎学理を構築することを目的とする本研究では、(1)プラズマ照射による成長促進効果の世代間伝搬の主要因解明。(2)プラズマから生体への分子輸送機構解明。(3)成長促進が生じる植物の種類の拡大について、4年間で研究する。 平成29年度は、平成28年度に引き続き、1.プラズマ照射による成長促進効果の世代間伝搬の主要因解明と、2.成長促進が生じる植物の種類の増大について検討した。 1.プラズマ照射による、成長促進効果の世代間伝搬の主要因解明では、カイワレ種子を用いて発芽と初期成長期における全長の伸長度に対するプラズマ照射の影響について明らかにした。具体的には、照射装置へのガス流速、照射時の種子密度、照射距離と照射時間の影響である。これらは全て種子に対するRONS照射量とその表面反応が重要であることを明らかにした。加えてリトアニアのヴィータウタス・マグヌス大学Vida Mildaziene教授と共同研究を開始し、種子内におけるホルモン産生量がプラズマ照射により変化し、発芽特性と良い相関を持つことを明らかにした。 2.成長促進が生じる植物の種類の増大では、九州管内の農業事業者の協力を得てイネのフィールドワーク実験を開始した。稲作における各行程についてプラズマ照射の影響があることを明らかにしており、プラズマ照射種子に対して作物学的な検討の必要性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の検討事項は、1.プラズマ照射による成長促進効果の世代間伝搬の主要因解明と、2.成長促進が生じる植物の種類の増大であった。
項目1のプラズマ照射による、成長促進効果の世代間伝搬の主要因解明では、プラズマ照射による種子とRONSの反応に関する成果を得た。加えて海外研究者との連携による分子生物学的知見についても明らかになりつつある。 項目2の成長促進が生じる植物の種類の増大では、懸念であったフィールドワークによる実証試験を開始することとなり、本研究成果を社会実装するための基礎研究を開始することが出来た。 以上の成果から概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、プラズマ照射効果の世代間伝搬機構について、エピジェネティック過程に対するプラズマ照射効果に焦点を当て4年の研究機関に以下の3項目を研究する。(1)プラズマ照射による成長促進効果の世代間伝搬の主要因解明。(2)プラズマから生体への分子輸送機構解明。(3)成長促進が生じる植物の種類の拡大について研究する。本研究ではプラズマ科学のみならず、分子生物学からの研究アプローチが必須であり、2つの学術分野の研究者の連携研究体制を形成して研究目的を達成する。主としてシロイヌナズナを用いてプラズマ照射効果の世代間伝搬機構を明らかにする。 平成30年度は、1.プラズマ照射による成長促進効果の世代間伝搬の主要因解明と、2.プラズマから生体への分子輸送機構解明、3.成長促進が生じる植物の種類の拡大について検討する。 1.プラズマプラズマ照射による成長促進効果の世代間伝搬の主要因解明については、シロイヌナズナを主な対象として、大気圧下で種子にプラズマ照射したサンプルの分子生物学的評価を引き続き行う。 2.プラズマから生体への分子輸送機構については、電子スピン共鳴分光法を用いた新しいプラズマ照射による生体内ラジカルの生成についての検討を行い、植物成長促進効果の相関を定量的に明らかにする。 3.成長促進が生じる植物の種類の拡大については、シロイヌナズナ以外にイネなどを対象として、多くの品種に対するフィールドワークレベルでの検証を行う。
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