平成30年度では、現在まで作製してきたSiNWs-SiGe複合膜に対して、熱伝導率の異方性を拡張3ω法を用いて測定した。その結果、挿入されたシリコンナノピラー構造により複合膜中に深さ方向に対して面内方向の熱伝導率が1/10となり、熱伝導率異方性を確認した。さらに、平成29年度までに確立した作製法のSiNWs-SiGe複合膜を用いて室温付近で僅かな温度差でも発電することが可能な熱電変換素子及び、それを構成する p(n)-SiNWs-SiGeの作製技術を確立し、その発電特性を評価した。作製した p(n)-SiNWs-SiGeを Van der pauw 法でキャリア密度、ホール移動度、電気伝導率を評価し、さらにゼーベック係数評価した。また得られた物性値を用いて熱電変換素子を設計し、実際に熱電変換素子を作製し評価した結果、室温(320 K)付近で僅かな温度差(2 K)でも発電することを確認した。その一方、Al電極と半導体材料間の界面電気抵抗が高く、その出力密度は 21 pW/cm2(2 K)と p(n)-SiNWs-SiGe単体の物性値を用いて計算した設計値よりも小さかった。また2端子法、4端子法を用いて界面電気抵抗を評価したところ、n-SiNWs-SoGeとAl界面の電気抵抗が高いことが確認され、更にSIMS分析からn-SiNWs-SiGeの表面不純物濃度が低いことが確認された。その結果、直径 10nm のナノワイヤーにおいて不純物や軸方向の界面の影響で熱伝導率が低減し、また高密度に配列した直径 10nmのSiNWsに対してSiGeなどの結晶材料を埋め込むことで電気特性(ゼーベック係数、電気伝導率)を維持したまま、熱伝導率を選択的に低減できることを明らかにした。以上のことより、SiNWs-SiGe複合膜が実際に熱電変換素子として利用できることを実証した。
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