研究課題/領域番号 |
16H03899
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
中野 貴之 静岡大学, 工学部, 准教授 (00435827)
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研究分担者 |
井上 翼 静岡大学, 工学部, 准教授 (90324334)
青木 徹 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (10283350)
本田 善央 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (60362274)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 中性子検出半導体 / BGaN / 結晶成長 / MOVPE / III族窒化物 / α線飛程 |
研究実績の概要 |
B原子を含んだIII族窒化物半導体を用いたBGaN中性子半導体検出器の開発を行った。 主に、母体材料となるGaN半導体の放射線検出特性評価と、気相反応を抑制したBGaN結晶成長技術の開発を実施した。 母体材料となるGaNの放射線検出特性の評価においては、α線の空気減衰を利用した各エネルギーのα線入射を行い、各エネルギーのα線検出エネルギースペクトルを得た。この結果を、放射線シミュレーターPHITSを用いて再現を行うことで、GaNのシミュレーションパラメーターを導出し、得られたパラメーターを用いてGaN中のα線のブラッグカーブを算出した。この結果より、GaN結晶中のα線の飛程は約3.4μmであることを導出した。 気相反応を抑制したBGaN結晶成長技術の開発に関しては、有機金属原料として安定性の高いトリメチルボロン(TMB)を用いることで、気相反応の抑制を検討した。従来用いていたトリエチルボロン(TEB)よりも、安定性が高くなったことで輸送拡散中の原料の分解が抑制され、気相反応に起因するアダクトの生成を抑制することで高品質結晶の作製を試みた。本検討により、TEBを用いたBGaN成長においてはNH3原料濃度の変化により気相反応が影響して、BGaN中のGa/B比が変化するのに対して、TMBを用いたBGaN成長ではNH3流量によらず、III族原料比によりGa/B比が一定である結果を得るに至った。また、TEBを用いた場合には数100nmの成長で表面平坦性が劣化していたにも関わらず、TMBを用いた結晶成長により数μmの平坦な薄膜成長を実現するに至っている。これらの結果より、TMBを用いた結晶成長により、気相反応を抑制したBGaN成長技術の開発が推進した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標であった、GaNデバイスを用いた放射線検出特性評価により、α線の飛程を導出し、デバイス設計に必要なパラメーターの摘出が完了した。また、BGaN成長においてもTMBを用いた結晶成長技術の開発により、高品質BGaN結晶成長の基礎技術を確立しており、今後デバイス化に向けた開発を十分に進められる結果を得ている。当初予定通りであり、順調に研究が進捗していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
高品質BGaN結晶成長技術を用いたBGaN中性子半導体検出器の作製を行う。作製したデバイスを用いてα線検出特性評価および中性子検出特性評価を実施する。これらの評価から、中性子検出スペクトルを得てBGaN中性子半導体検出器の基礎特性を明らかにする。 また、高B濃度BGaN薄膜の結晶成長技術について検討を行い、中性子捕獲確率の向上を目指す。特に、表面反応によるB原子の取り込みについて評価を実施することでBGaN表面反応メカニズムを解明する。これらの得られた知見をもとにBGaN結晶成長技術の開発を実施して、高B組成BGaN薄膜を作製する。このようにして得られたBGaN薄膜をデバイス化して、放射線検出特性評価を行うことで、BGaN薄膜におけるB組成の中性子検出依存性を評価する。
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