研究課題/領域番号 |
16H03903
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
臼杵 毅 山形大学, 理学部, 教授 (70250909)
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研究分担者 |
安仁屋 勝 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (30221724)
尾原 幸治 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (00625486)
田原 周太 琉球大学, 理学部, 准教授 (80468959)
小野寺 陽平 京都大学, 原子炉実験所, 助教 (20531031)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 量子ビーム / イオン伝導性ガラス / X線異常散乱 / 中性子散乱 / 構造モデリング / ガラス構造 / イオン伝導経路 / 固体イオニクス |
研究実績の概要 |
本研究では、量子ビームを最大限に活用した元素選択精密構造解析実験を駆使することにより、こうイオン伝導性ガラス物質におけるガラスマトリックス構造及びイオン拡散経路の構築過程を原子・電子レベルで可視化することを目指している。平成28年度は、本研究遂行の要となる元素選択X線異常散乱実験環境の整備に着手した。X線異常散乱実験では僅かな構造情報の違いを正確に解析する必要があることから、試料作製において試料の酸化等を防ぐ必要があるため、酸素分圧を極限まで抑えることの可能なグローブボックスを整備し、メカニカルミリングによる研究対象材料の作製、及び得られた試料の精密電気伝導度測定、イオン伝導・電子伝導の分離、熱物性測定を実施した。これと並行して、SPring-8における元素選択X線異常散乱実験環境の整備を進め、アナライザー結晶を用いて弾性散乱強度を高精度に分光し観測する手法を確認した。さらに、精密量子ビーム構造データを用いた三次元構造モデリングに着手した。放射光X線回折実験、中性子回折実験データにX線異常散乱実験データあるいは同位体置換中性子回折実験データを加えたモデリングにより、イオン伝導性ガラスにおける可動イオンの拡散パスや、ガラス中の不均一構造の可視化が可能なことを確認した。特に、イオン伝導性ガラスにおいて、異常散乱データを加えることで可動イオンの位置決定精度が格段に向上し、可動イオン同士が近距離に隣接し協同的に移動する伝導メカニズムを支持する極めて重要な構造知見が得られつつある。これと同時に、不規則性とイオン輸送に関する理論的解釈の検討を開始し、精密構造情報と伝導性を関連づける理論の構築に着手した。これらの結果は、国内外の学会等で発表を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を推進する上で要となる試料作成環境整備、X線異常散乱実験環境整備が順調に進んでいる。また、各種量子ビーム実験データを用いた精密三次元構造モデリングの構築に着手し、すでにイオン伝導性物質系における可動イオン周囲の構造情報や、ガラスにおける中距離秩序構造情報の抽出において重要な進展があった。さらに、不規則性とイオン輸送の関連に関する理論の構築を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
29年度中に、輸送特性の精密評価を進めながら、研究対象系に対する本格的な精密量子ビーム実験を実施する。メカニカルミリングにより伝導性を制御した試料に対するX線異常散乱実験、中性子散乱実験、XAFS実験を行う。すでに、すべての計画実験の課題がSPring-8やJ-PARC、PF-KEKで採択されており、順次実験を推進する。その上で、それらの精密構造データを用いた本格的な進化型三次元構造モデリングに着手する。イオン伝導経路の可視化に有効な解析手法を確立する。これと並行して、不規則性とイオン輸送に関する理論再構築を本格的に進める。得られた結果を取りまとめ、学会発表や論文発表を行う。
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