研究課題
本研究では、量子ビームを最大限に活用した元素選択精密構造解析実験を駆使することにより、高イオン伝導性ガラスにおけるガラスマトリックス構造及びイオ ン拡散経路の構築過程を原子・電子レベルで可視化することを目的としている。平成28年度および29年度で元素選択X線異常散乱実験環境の整備を進め、研究対象試料に対する精密X線異常散乱実験および中性子散乱実験を実施した。平成30年度では、メカニカルミリングによりガラス化進行度を制御した試料に対するX線異常散乱実験データの解析を進めた。さらに、放射光X線回折実験、中性子回折実験データにX線異常散乱実験データを加えた三次元構造モデリングを重点的に推し進め、イオン伝導性ガラスにおけるイオン輸送特性に直結する可動イオンの拡散パスやガラス中の不均一構造の精密解析を行った。その結果、X線異常散乱実験データを加えることにより、可動イオンのガラス内の位置決定精度が格段に向上し、可動イオン同士が異常に近距離に位置しガラス中に均一に分布していないこと、ある距離以内でほぼ全ての可動イオンが連結していることが実験的に初めて明らかにされた。これにより、可動イオンは個別に拡散移動するのではなくお互いに連結して協働運動していることが突き止められた。この結果は、不規則系におけるイオン拡散が可動イオンの結合揺らぎと構造揺らぎによって向上することを予測した理論とも一致する結果となった。これらの結果から、イオン伝導パス中で可動イオンが互いに近距離で連結できるように不規則性を制御することで、イオン伝導に最適な材料設計できるという学術的指針が得られた。関連して、複雑な構造を持つ不規則材料において、本研究により実施された量子ビーム実験を用いた精密構造解析手法が極めて有効であることが示された。これらの結果は、国内外の学会等で発表を行っている。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (28件) (うち国際学会 7件、 招待講演 6件)
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