研究課題
原子核の励起状態であるアイソマー状態は、原子核物理学として大いに興味深い研究対象であるだけでなく、宇宙物理学からもその重要性が指摘されているが、その寿命の短さから核半径測定などは困難であった。そこで、原子核衝突の確率である反応断面積という物理量を用いてアイソマー状態核半径を測定する手法を確立することを目指した。我々がこの研究対象として選んだアイソマーは、16N(0-)(半減期~5μs)である。もし、このアイソマーの核半径が基底状態より大きいと、例えばビッグバンの過程で高温のためにこの状態が生成されて中性子捕獲反応が格段に大きな確率で起きる可能性が出てくるため、ビッグバン元素合成仮説に大きく影響を与える。我々はこのわずか 5μs の半減期をもつアイソマー状態の核半径を求めるために、原子核の衝突確率に相当する反応断面積を測定した。その結果、反応断面積はアイソマー状態の方が大きく、基底状態とは大きく異なる核半径を持つらしいことを突き止めた。この結果により、宇宙の中、特に恒星中やビッグバン元素合成仮説における元素合成の速さの、より正確な見積もりに寄与することが期待される。この研究の過程で、実験による核半径測定を可能にするために,検出器の開発が必要であったので,同時に並行して数種の検出器の開発も行った。粒子の速度を精度よくかつごく短距離で測定するために重イオン用リングイメージングチェレンコフ検出器を開発し、1地点での測定で粒子速度を 0.05 % という超高分解能で測定できるシステムの完成に成功した。よりシンプルなシステムで速度を高精度で測定するために、高エネルギー中重核イオン用に全反射型チェレンコフTOF検出器、低エネルギー軽核イオン用に高時間分解能プラスチック・シンチレーション検出器を開発し、いずれも Xe ビームに対して時間分解能 5ps という記録的高時間分解能を達成することに成功した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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