研究課題/領域番号 |
16H03909
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
三井 隆也 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 放射光科学研究センター, 上席研究員(定常) (20354988)
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研究分担者 |
増田 亮 京都大学, 原子炉実験所, 研究員 (50455292)
平尾 直久 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (70374915)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 量子ビーム / メスバウアー分光 / 核共鳴散乱 / 放射光 / 小角散乱 / メスバウアー効果 / 金属微細組織 / 超高分解能 |
研究実績の概要 |
本研究は、放射光から バンド幅を制御した57Fe 放射光メスバウアーγ線を生成する高性能核分光器を開発し、それをメスバウアー小角散乱分光法に適用して、鉄系材料の微細組織や歪、欠陥、秩序相揺らぎに関連した電子磁気構造を局所解析できる全く新しい微細構造解析法を創出するものである。この目的を達成するため、本年度は、57Fe放射光メスバウアーγ線を生成可能な核分光結晶[57FeBO3]の温度と磁場を同時に制御する装置を開発した。この装置を量子科学技術研究開発機構の専用ビームライン(BL11XU:SPring-8)に導入し、純核ブラッグ反射[57FeBO3 333]による放射光の超単色化を試みた所、57FeBO3の温度とRF磁場強度を適切に選ぶことで1μeV~10neV 領域でバンド幅が可変の放射光メスバウアーγ線を生成することに初めて成功した。さらに、このビームをプローブとする放射光メスバウアー小角散乱装置の立ち上げを行った。本開発では、Siの非対称反射を用いて発散角1秒角以下の平面波メスバウアーγ線を生成し、それをバルク鉄に照射した時に内部に存在する磁壁(L~数百 nm)部で発生した核共鳴小角散乱をSi 結晶アナライザー[Si333チャンネルカット結晶]で角度分解能1秒角以下で分離して観測する極小角散乱メスバウアー分光を実現させた。実験では、バンド幅1μeVの入射γ線による核共鳴小角散乱強度の観測とバンド幅10neVの入射γ線によるメスバウアー小角散乱スペクトルの観測を行い、散乱角、試料の厚さ依存性、57Fe 核共鳴元素の富化率依存性などを詳細に調べることで、金属微細組織部を正確に局所解析する測定法の最適条件(配置、試料条件等)を明らかにした。次年度以降の応用実験の準備として、小角散乱測定用高温電気炉及び超高圧発生装置の設計・製作も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
核分光結晶[57FeBO3]の温度と磁場を同時に制御する装置開発を開発し、それを用いた放射光の超単色化を行い、世界に先駆けて1μeV~10neV 領域でバンド幅を制御したシングルラインの放射光メスバウアーγ線を高出力で生成することに成功した。さらに、Fe-57核分光器とSi結晶の非対称反射を利用して平面波放射光メスバウアーγ線を生成し、従来のメスバウアー分光法では全く実施が不可能な1秒角以下の高角度分解能の極小角散乱メスバウアー分光を実現させた。本手法は、鉄系材料の微細組織や歪、欠陥、秩序相揺らぎに関連した電子磁気構造を局所解析できる全く新しい微細構造解析法を創出するものである。応用実験の準備として小角散乱測定用高温電気炉、超高圧発生装置の開発も終了している。このように、本研究課題で予定していた機器開発については順調に進展しており、放射光小角散乱メスバウアー分光法の測定にも成功している。以上のことから、研究は順調に進展しているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、放射光メスバウアーγ線のバンド幅制御装置を利用したメスバウアー小角散乱法の高度化を継続して行い、より実用的な金属微細構造の局所分析法として確立させる。応用研究として、高温電気炉を利用した軟磁性材料のナノ結晶化過程の“その場”や超高圧発生装置(ダイアモンドアンビルセル)による鉄の圧力誘起構造転移の局所解析を試みる。さらに、開発を行った装置を用いた先導的な研究手法を鋼材、磁性体、超伝導体等の多彩な材料研究へ適用することで、その有用性を示していく。得られた研究の成果の発信として、研究結果の学術論文投稿や学会報告を積極的に実施する。
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