本研究の目的は,ポアソン比を仮定すること無く局所領域の組成と歪みを定量することが可能になる異常散乱マイクロ回折法を開発し,それをSiGe層の局所領域の評価に適用することである. 本年度は最終年度として以下を実施した. (1)測定装置および制御システムの完成 本測定のキーポイントは,回折強度を精密に測定することである.これまで開発してきたナノ集光回折システムで使用している検出器は可視光変換型CCDカメラであるため,ダイナミックレンジが4桁程度しかなく,本実験を実施するには能力不足であった.この問題を解決するため,ハイブリッドピクセル検出器(ASI社製Timepix STPX-65k)を導入するとともに制御ソフトを開発した.この検出器は55 μm×55 μmの空間分解能で,120フレーム/秒,13 bitでの読み込みができるため,回折強度を高計数で測定することが可能となった.本検出器と高輝度な放射光マイクロビームを利用することで,1秒間の計測で約100万カウントの計測が可能となり,統計誤差0.1%の精度で回折強度を測定することが可能となった. (2)歪み緩和SiGe層局所領域評価 (1)で開発したシステムを使用し,歪緩和SiGe層内の組成を決定することを試みた. Si 基板および歪緩和SiGe層からの004ブラッグ点近傍の逆空間マップ測定をX線のエネルギー,11.092 keVおよび11.107 keV(吸収端近傍)で行った.両者を比較すると,吸収端エネルギーである11.107 KeVでピーク強度が減少していることが確認できた.
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