研究課題/領域番号 |
16H03914
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
山田 貴博 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (40240022)
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研究分担者 |
槙山 和秀 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (40347307)
松井 和己 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (00377110)
山本 剛大 東北大学, 工学研究科, 助教 (00802860)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バイオメカニクス / 手術支援 / 力学モデル / 人腹腔 / 生体物性計測 / 計算力学 / 有限要素法 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は,より安全な手術の施行に資するものとして,腹腔鏡下・ロボット補助下の手術における患者個別シミュレーション・ナビゲーションシステムの開発を目指し,その基盤となる臨床応用可能な高精度かつ高速な腹腔内組織全体の力学シミュレーション技術を開発することである. 平成30年度の研究においては,平成29年度の研究において開発した直交格子を用いた膜・網組織の力学モデルに対する新しい計算手法について,定式化と近似手法の見直しを行うとともに,3次元問題に対する計算プログラムを作成し,基本的な特性を評価した.この手法では,膜・網組織を表す曲面形状をスプライン関数を近似基底とする直交格子上で定義されるレベルセット関数を用いて表現するとともに,変位場についても同じ直交格子で近似するものとなっている.また,レベルセット関数が臓器を表すソリッド要素との接触を考慮する際に利用できるものである.膜・網組織の幾何学モデルについては,医療用画像から判別することが困難であることから,解剖学的知見により位相的な幾何構造を再現した標準モデルをモーフィングし,患者固有モデルを生成する手法を検討した.平成30年度は,新たにモーフィングに微分方程式の解を用いる手法を検討した. 平成30年度は以上に加え,手術シミュレーション・ナビゲーションシステムで用いる物性値を取得するために,手術によって摘出された直後の臓器に対して,逆解析手法により物性同定を行う手法の開発を進めた.H29年度までに開発した実験システムについて,臓器に力を加える装置の剛性を向上させるための改良を加えるとともに,載荷前の臓器形状と変形状態を3次元計測するカメラを更新し精度の向上を図った.また,装置の妥当性を確認するため,熱可塑性エラストマーを用いて模擬臓器作成する手法を確立するとともに,その物性を計測するための2軸試験装置を作成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膜・網組織の力学モデルに対する直交格子を用いた新しい計算手法について,3次元問題に対するプログラムを作成し,その数値特性を検証した.基本的な特性は提案手法が要求性能を満たすものであることを示した.この点に関する研究進捗はほぼ順調である. 膜・網組織の幾何学モデルを生成するためのモーフィング手法について,平成29年度の研究での問題点を改善するための手法として微分方程式の解を用いる手法を用いる手法を検討したが,具体的なアルゴリズムまでは到達しておらず,進捗に遅れが発生している. 手術シミュレーション・ナビゲーションシステムで用いる臓器の物性値を逆解析により同定する手法に関しては,実験装置の改良を行うとともに,多軸特性が評価された材料を用いて手法の妥当性を検討するため準備を行った.実際の物性値同定手法の妥当性を確認するまでは至っておらず,研究進捗におこれが見られる.しかしながら,平成29年度で問題となった順解析において精度が不十分であった点に関しては,模擬臓器のための材料の2軸試験を実現することで,改善された.
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今後の研究の推進方策 |
膜・網組織の力学モデルに対する直交格子を用いた新しい計算手法については,平成30年度に開発した3次元問題に対する手法を用い,接触を考慮したプログラムを作成することで,想定される力学現象に対応した数値計算が可能となる予定である. 一方,膜・網組織の幾何学モデル生成手法については,モーフィングに微分方程式の解を用いる手法を完成させることで,患者固有の幾何学モデル作成の手法を確立する予定である. 以上により,本研究課題で達成するべき腹腔内組織全体の力学シミュレーションが研究年度内に完成すると考えている. さらに,臓器の物性値を逆解析により同定する手法に関しては,平成30年度に準備した詳細な材料特性が得られた模擬臓器を用いて妥当性検証が進められると考えており,最終年度内に実際の人の摘出直後の臓器を用いて,計測を行う予定である.
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