研究課題/領域番号 |
16H03921
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
成瀬 弘 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (20172596)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | シューベルト・カルキュラス / 同変コホモロジー理論 / 対称函数 / 組合せ論 / ヘッケ環 / Hall-Littlewood函数 |
研究実績の概要 |
本年度は、Factorial Hall-Littlewood函数に関連する事柄を中心に研究を進めてきた。複素鏡映群の同変余不変式環の中で、対称群不変となる部分環の基底としてのFactorial Hall-Littlewood函数の位置付けは一応できたが、 余不変式環全体の基底にあたるSchubert基底の候補については、まだ未完成の部分がある。しかし、この方向で必ず適当な基底が見つかるものと考えている。一方で、パラメーターt=-1の場合には、factorial Q-函数となるが、この同変ホモロジーでの双対基底にあたるfactorial p ^函数についても、その母関数やdivided differenceによる振る舞いなどが明らかになった。このことは、Hall-Littlewood函数のさらなる理解へと繋がるものである。 もう一つの成果は、hook公式に関するものである。すでに、hook公式の視点からBump-Nakasuji予想の一般化を定式化していたが、この予想が最近、Aluffi-Mihalcea-Schurmann-Su によってMotivic Chern類を用いて解決された。この予想は旗多様体の場合についての結果であるが、Grassmann多様体の場合を含むより一般のParabolic部分群による等質空間G/Pの場合の類似の結果を、MihalceaおよびSuとともに得ることができた。また、これをさらに発展させて、仲田のColored hook公式のq-類似にあたる予想式を定式化することができた。Fomin-Kirillov代数に関しては、Kirillov氏の予想式に修正が必要なことが判明したため、その後の進展は今の所、得られていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Factoral Hall-Littlewood函数についての一定の成果があったことがまず1つの理由である。複素鏡映群について、これまでB.Totaroは余不変式環のS_n不変部分について、Hall-Littlewood関数がSchubert基底のアナロジーであることは示していたが、今回はこれを同変余不変式環のS_n不変部分に拡張して、factorial Hall-LIttlewood関数がまさしく同変のSchubert基底に当たるものであることを、局所化の写像を用いて示すことができた。次に、もう一つに成果であるhook公式に関連した新たなる進展が始まったことは今後の進展に繋がるものと考えられる。どちらもこれまでの同変シューベルト・カルキュラスの手法を用いて、さらに発展・深化させたものとなっているため。
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今後の研究の推進方策 |
複素鏡映群の同変余不変式環の望ましい基底の構成については、現在既に知られている古典型のSchubert基底の構成法が大いに参考になる。すでに解決のための方策は持っているが、具体例を豊富に計算することで、一般的な定式化およびその証明が可能になるものと考えている。 Hook公式の一般化に関する予想式の解決に関しても、方針は既にできていて、やはり具体例を数多く計算することが証明への手掛かりを得ることに繋がるものと考えている。海外での研究集会に参加して、これまでの成果を口頭発表し、意見を求めることで問題解決やさらなる一般化や深化を試みたいと考えている。 これらの課題解決に加えて、今年度はこの研究の最終年度であるため、これまでの研究の総まとめとして、講演などを通してレクチャーノートや書籍などに研究結果をまとめる作業も行ってゆきたい。
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