研究課題/領域番号 |
16H03922
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中西 知樹 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (80227842)
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研究分担者 |
国場 敦夫 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (70211886)
尾角 正人 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (70221843)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 団代数 / C行列 |
研究実績の概要 |
中西は、Notre Dame大のMichael Gekhtman氏と団代数の基礎と応用に関する研究を行い以下の結果を得た。 まず背景について述べる。団代数においては、C行列と呼ばれる行列が重要である。C行列は種子(seed)のy変数のトロピカル化として得られるが、逆に、C行列が種子を特徴付ける、という著しい性質を持つ。C行列の基本性質として重要なものに符号同一性(sign coherence)というものがある。これは、C行列の各列ベクトルは常に同じ符号(0を含む)である、というものである。符号同一性の内在的な意味の理解についてはまだ十分な理解は得られていないが、これらが初期交換行列のルートになるという予想がNakanishi-Stella-Zelevinsky (2014) によってなされている。 さて、C行列は係数つき団代数の観点からより一般の幾何係数を持つ団代数に拡張される。これをここでは拡張C行列と呼ぶことにする。拡張C行列は初期行列を任意に取ることが可能であるので、明らかに符号同一性を持たない。しかしながら、この研究において、以下のような漸近的符号同一性(asymptotic sign coherence)という性質を持つことが発見された。それは、任意の初期行列から出発して(ある種の一般性と単調性の仮定の元で)変異を十分行えば、必ず符号同一となり、その後は符号同一性を保ち続ける、というものである。これを予想として定式化し、ランク2の場合に証明を行った。以上の結果はarXiv:1904.00971, M. Gekhtman, T. Nakanishi, Asymptotic sign coherence conjectureとして公表をした。 国場と尾角は、ランダム箱玉系の極限形状を熱的ベーテ仮説の観点から記述する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年度は、一般団代数に付随する高次ダイログ関数とその関数等式、および、団代数の変異のHamiltonian形式の定式化とダイログ恒等式の導出、の結果を得た。2017年度は、団代数の諸概念の相互関係を見直し、基礎理論全体の再構築、再定式化を進めた。2018年度は、C行列の漸近的符号同一性予想の定式化と部分的照明を行った。 また、研究計画通りに、以下の国際研究集会を開催した。2016年度「Infinite Analysis 16 Summer School」名大、2017年度「Algebraic and Combinatorial Aspects in Integrable Systems, Integrable Hierarchies and Beyond」大阪市大、2018年度 「Infinite Analysis 18 Spring School: R-matrices, Cluster Algebras, and Integrable Systems, Integrable Hierarchies and Beyond」名大、「Infinite Analysis 19 Workshop: Quantum Symmetries and Integrable Systems」東大。 以上のように研究計画は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
中西は、引き続き団代数の基礎と応用の研究を中心に研究を行う。 また、2019年6月にはRIMSにおいてRIMS研究プロジェクトの主催責任者として、国際研究集会「Cluster Algebras 2019」を3週間にわたって開催する。これは、国内外55名の講演者を招く、2014年の韓国KIASにおけるセメスタープログラム以来となる団代数に関する包括的な研究集会であり、本研究計画の中心的な位置付けにあるものである。これにより、団代数研究の最先端の結果を吸収し、また、本研究計画の新たな方向性を検討する。 国場と尾角は、引き続き種々の可積分模型の代数的組合せ論的構造の研究を行う。
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