研究実績の概要 |
近年のCohen-Macaulay表現論は, 導来圏・三角圏を制御する傾理論とそのCalabi-Yau類似である団傾理論, さらに古典的および高次元Auslander-Reiten理論の影響を強く受けて発展している. ICM 2018の招待講演で, 主要な研究成果に関するサーベイ講演を行い, proceedingsに解説論文を執筆した(arXiv:1805.05318).
重要な加法圏のクラスとして, 三角圏(Grothendieck-Verdier)と完全圏(Quillen)が挙げられるが, Nakaoka-Paluのextriangulated categoryはこれらの共通の一般化を与える. Nakaoka, Paluとの共同研究で, extriangulated categoryにおけるAuslander-Reiten理論を構築した(arXiv:1805.03776). これは, 従来は三角圏と完全圏で別個に議論されてきたAuslander-Reiten理論の統合を与えるものである. さらにextriangulated categoryの射影対象の極小右概分裂射の擬核と, 移入対象の極小左概分裂射の擬余核を分析し, 適切な仮定のもとで安定圏がτ圏の構造を持つことを示した.
d遺伝多元環Aの高次前射影多元環Πは, Calabi-Yau性を満たす重要な研究対象である. Grantとの共同研究で, AがKoszul多元環の場合にΠを調べた(arXiv:1902.07878). 特に, Πがあるポテンシャル付き箙の高階Jacobi多元環となること, さらにΠが(almost) Koszul多元環となることを示した. またAのquadratic dualの自明拡大環からΠのquadratic dualへの全射準同型を構成し, これが同型となる必要十分条件を与えた.
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