研究課題/領域番号 |
16H03925
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤野 修 大阪大学, 理学研究科, 教授 (60324711)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 極小モデル理論 / 混合ホッジ構造 / 乗数イデアル層 / トーリック多様体論 |
研究実績の概要 |
2017年度は10年がかりで完成させたFoundations of the minimal model programなる専門書が出版できた。これは解説部分の充実した長めの論文を単行本の形で出版したものであり、教科書や解説記事のようなものではない。この本が出版された後、軽い燃え尽き症候群に陥ってしまった。その後気合いを入れ直し、乗数イデアル層に関するベルティニ型定理を十分一般的な形で証明することに成功した。成功したと書いたが、一度証明できたと思ってプレプリントを書いて配布し、海外で講演した後に間違いが発覚するという失敗を犯してしまった。結局証明を修正するのにさらに数ヶ月間悪戦苦闘することになってしまった。苦い経験であった。2017年度の印象深い成果は、中国のWenfei Liuさんと共同研究をしたことである。面識はなかったのだが、Wenfei Liuさんが希望して大阪大学に1ヶ月ほどやってきた。具体的に何かを共同で研究する予定はなかったのだが、予想外にうまく共同で成果を上げることが出来た。この時のWenfei Liuさんとの一連の議論は非常に有益で、その後の研究のアイデアを得ることに成功した。いずれにせよ、2017年度はFoundations of the minimal model programの出版が一番の成果で、その後の燃え尽き症候群もWenfei Liuさんとの共同研究などで解消されたので、最終的には実りの多い1年だったと思う。上で述べた仕事以外では、Haidong Liuさんとの擬対数的スキームの正規化に関する論文もある。なかなかマニアックな内容で、理解者は皆無のようであるが、個人的にはとても良い結果だと思っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
最初に述べたように、Foundations of the minimal model programなる本が完成して出版できたのが大きかった。この本が出版されたので、擬対数的スキームを自由自在に論じることが可能になった。今後はいろいろな応用を考えていくつもりである。
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今後の研究の推進方策 |
Foundations of the minimal model programで擬対数的スキームの基礎理論を確立したのだが、すでに擬対数的スキームを扱う新しい手法の開発に取り組んでいる。現在のところ非常に順調に研究は進んでおり、数年前に計画していたよりはるかに大きな成果を得られそうである。
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