研究課題/領域番号 |
16H03941
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
梶原 健司 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (40268115)
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研究分担者 |
増田 哲 青山学院大学, 理工学部, 准教授 (00335457)
太田 泰広 神戸大学, 理学研究科, 教授 (10213745)
廣瀬 三平 芝浦工業大学, デザイン工学部, 助教 (20743230)
井ノ口 順一 筑波大学, 数理物質系, 教授 (40309886)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 離散微分幾何 / 離散可積分系 / 離散曲線 / ソリトン / τ函数 / 離散正則函数 / パンルヴェ方程式 |
研究実績の概要 |
(1) (i)空間離散曲線の等距離等周変形のτ函数による明示公式を得た. また,ミンコフスキー,中心アフィン,等積中心アフィン幾何の(離散)平面曲線の変形理論を考察した.(ii)相似幾何における空間曲線とユークリッド幾何の定曲率曲線の密接な関係を明らかにした. (2)パンルヴェVI方程式に付随する離散冪函数をD4(1)型の格子のA3(1)部分格子上の離散力学系として特徴付け,ABS理論との関連を明確にした.この結果をA4(1)格子上の離散力学系に一般化することに成功し,それがAgafonov-Bobenkoによる六角格子上の離散冪函数に他ならないことを示した.関連すると予想される可積分系として2変数Garnier系や(q-)Sasano系の構造を調べた. (3) (i)対数型美的曲線を可積分等角変形の定常流として定式化し,変分原理で定式化することに成功した.この結果は対数型美的曲線がオイラーの弾性曲線の相似幾何類似であることを意味する.また,相似幾何における空間曲線の可積分等角変形の定常曲線を考察し,変分原理での定式化に成功した.これは対数型美的曲線の空間曲線への一般化を与える可能性がある.(ii)平面離散曲線の離散等角変形から対数型美的曲線の新しい離散化を提案し,離散変分原理による定式化を与えた.(iii) Nakayama-Wadatiによる曲線短縮方程式の離散化を見直し,新たな離散曲線短縮方程式を定式化した. (4)(i)ホドグラフ変換を通じて曲線の変形を記述する非収束型複素短パルス方程式やDegasperis-Procesi方程式などのソリトン解の構成と離散化を行った.(ii) Broadbridge-Whiteの土壌の水浸透モデルの離散化を再検討し,Crank-Nicholsonスキームをベースとした2次精度の可積分離散モデルを新たに構築してその有効性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)離散曲線・曲面論とその変形理論(2)離散正則函数の理論(3)曲線・曲面の離散モデル構築(4)曲線や界面の安定な高精度数値解析手法,と大きく4つのプロジェクトに分けている.個別のプロジェクトには進度の差はあるが,全体として概ね順調に進展している.(1)については論文が長大になり,査読に長い時間がかかっているが,手持ちの成果としてはほぼ計画通りのものが得られている.(2)は当初の予測と反し,E型対称性を持つパンルヴェ系が離散正則函数の設定と必ずしも整合的でなく,むしろ高階もしくは高次元のもの,例えばGarnier系やSasano系が有望であることがわかってきた.(3)対数型美的曲線に関する研究は予想を超えて大きく進展した.(4)曲線短縮方程式の研究は(3)にエフォートを使って若干遅れている.界面モデルについては粒界変形モデルに取り組む前に土壌の水浸透モデルについてより高精度のモデルを作る必要性が生まれ,それに成功した.
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今後の研究の推進方策 |
(1)離散空間曲線の等周等距離変形の格子Landau-Lifschitz方程式の特殊化としての定式化の最終的な詰めを進める.また,相似幾何における(離散)空間曲線の可積分等角変形の理論を構築する.(2)六角格子上の離散冪函数をワイル群の表現論から導出することに成功した.解の明示公式の研究を進める.(3) 美的曲線の理論は設計工学研究者も交えて実装と実用への展開まで見据えて研究を進める.(4) 離散曲線短縮方程式の結果をとりまとめて早急に論文を公開する.また,界面モデルについては粒界変形モデルや植物の影響を考慮した水浸透モデルの離散化を行う.
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