研究実績の概要 |
本研究の目的は, 測度論的な手法による場の量子論のスペクトル解析を確立することである. 本研究では, ラフパス理論の新しい応用や無限次元SDEを開発し, 測度論的な手法による場の量子論のスペクトル解析の手法を開発する.以下の(A)-(E)について研究期間内に研究する.
(A. ラフパス理論によるGibbs測度の構成と応用)(1) UV をくりこんだGibbs測度, また2重確率積分を備えたGibbs 測度の構成. (2) ラフパス理論を用いた基底状態の解析. (B. 基底状態の研究)(1) 特異性の高いハミルトニアンの基底状態の存在を非摂動的に示す. (2) 基底状態の空間的指数減衰性の下からの評価を与える. (C. 確率解析的UVくりこみ理論)(1) 非局所的な運動項をもったハミルトニアンの確率解析的UVくりこみ理論の構築. (2) Bernstein関数による一般化. (D. 多様体上の場の量子論の研究)時間的に安定な$3+1$次元 ローレンツ多様体上に定義したNelson 模型のスペクトルと多様体の局所的な性質の関係を明らかにする. (E. 場の量子論におけるSDEと古典極限の研究)(1) 古典極限によってウイグナー測度を導く.(2) 非局所的な模型に付随したSDEを構成する.
H28年度は(A1)の課題について大きな進展があった. それを現在Aarhus大学のOliver Matte教授と共同でまとめて投稿準備中である.また,本研究課題に関する論文4編が国際誌に掲載された(一部は印刷中). さらに本研究課題に関する研究成果を海外の学会, 大学のセミナーで5回発表し, 国内では2回発表した. さらに, 2016年6月には国際研究会を開催(一部資金を本科研費で負担)した. また, 関連する著書を一冊, 数学書房から出版した. 分担者の宮尾准教授とは研究打ち合わせを1回行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H28年度の研究計画は以下だった. (A)(1) UV をくりこんだGibbs測度, また2重確率積分を備えたGibbs 測度の構成. (2) ラフパス理論を用いた基底状態の解析. (B)(1) 特異性の高いハミルトニアンの基底状態の存在を非摂動的に示す. (C)(1) 非局所的な運動項をもったハミルトニアンの確率解析的UVくりこみ理論の構築.
長年の夢が遂に叶って一番難航が予想されていた課題(A1)をAarhus大学のOliver Matte 教授と共同で示すことができた. UVをくりこんだ汎関数積分表示(Feynman-Kac公式という)をOliver Matte教授が示し, それのギブス測度の存在を廣島が証明した. 現在, 論文にまとめて投稿準備中である. (A2)は進展しなかった. (B1)はやや進展した. (C1)についてもAarhus大学のポスドクGonzaro Bleyとペアポテンシャルの議論を行い, やや進展した.
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今後の研究の推進方策 |
(I) (A1)をOliver matteと共同で論文に仕上げ国際誌に投稿することを第一の目標にする. さらに上記に引き続き(A2), (B1), (C1)の研究に力をいれる.
(II) H29年度はZied Ammari 教授と共同で(E1)場の量子論における準古典近似の理論を完成させる. H28年度には数回すでに打ち合わせを行う機会があり, チューリッヒ工科大学のポスドクMarco Falconi にとも共同でPauli-Fierz模型の準古典近似の問題に取り組む. その結果Wigner 測度と古典的なMaxwell 方程式を導出する.
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