研究課題/領域番号 |
16H03944
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
磯崎 洋 立命館大学, 理工学部, 授業担当講師 (90111913)
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研究分担者 |
岩塚 明 京都工芸繊維大学, 基盤科学系, 教授 (40184890)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 逆問題 / S行列 / 散乱理論 / シュレーディンガー作用素 / ディリクレノイマン写像 |
研究実績の概要 |
無限遠において標準的なリーマン計量に漸近する非コンパクトな多様体においてラプラシアンの連続スぺクトルの性質を研究した。特にハイゼンベルグのS行列を多様体上に拡張し、S行列の情報から多様体の情報を引き出す逆問題を主目標とした。多様体としては幾何学や物理学に現れるものから数論に現れるものまでを考慮し、また連続モデルと離散モデルの双方に並行して進めることのできる統一的理論を構築することを目標とした。連続モデルにおいては数論における多様体をよい例とする錘状の特異性を持つ多様体において逆散乱理論を研究した。錘状特異点の一般的な定義を導入することができ、以前から行ってきたスペクトル理論と合わせることにより散乱理論の順問題の部分については骨組みを確立した。さらに逆問題における重要な手法である境界制御法を錘状特異性をもつ多様体に拡張しつつある。離散モデルにおいては周期的な格子を局所的に摂動した系に対してスペクトル逆散乱理論を研究した。六角格子は物理的に重要な例としてのグラフェンを含んでおり離散シュレーディンガー作用素の重要な研究対象である。六角格子に対してS行列からのポテンシャルの再構成、欠損の同定という逆問題を解決した。また格子上のシュレーディンガー作用素の異なる定式化として辺上の微分作用素を扱う量子グラフがある。これは量子力学のみならず神経系等の医学的問題、ネットワーク等のITの問題にも関連があり研究を発展させることは重要である。六角格子に対応する量氏グラフに関してスペクトル散乱理論を構築し、S行列から辺上のポテンシャルを再構成する逆問題を解決した。また回転面のミンコフスキー問題を逆問題の立場から解決した。3次元シュレーディンガー作用素のトレース公式を共鳴状態を用いて記述する新しい方法を発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非コンパクト多様体上の逆散乱問題に関しては懸案であった錘状特異点の構造に関して進展があった。適切な定式化を得ることができ、スペクトル逆散乱理論構築への道が開かれた。格子上の逆散乱問題に関しては六角格子上の離散シュレーディンガー作用素に対してS行列の決定、欠損の同定の問題を解決した。また量子グラフに対しては六角格子の場合にS行列からのポテンシャルの再構成を証明した。1次元ゲルファントレビタン理論を応用して回転面に関するミンコフスキーの問題を解決した。
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今後の研究の推進方策 |
非コンパクト多様体上の逆散乱問題に関しては錘状特異性の新しい定義に基づいてスペクトル理論全体の再編成を行う。特にラプラシアンの定義域の関数の正則性の評価を精密に行い、スペクトル理論と境界制御法をともに拡大する。 離散シュレーディンガー作用素に関しては周期的格子の局所的摂動からさらに考察の範囲を拡げ、一般のグラフ上の欠損の問題等の新しい問題を開拓する。さらにシュレーディンガー作用素の連続モデルの離散作用素による近似の問題の研究を発展させる。回転面のミンコフスキー問題に関する新しい問題へと着手する。
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